AACA賞2008 AACA賞|金刀比羅宮プロジェクト
AACA賞2008 AACA賞
金刀比羅宮プロジェクト象頭山の中腹。南東は絶壁に近い断崖で、反対に北西は急激に上昇する山肌が迫り、湧き出すような樹木が覆い被さる金刀比羅宮の敷地に、原風景を維持し、樹木を切らないこと、山を壊さないことを条件に、槌破風を持つ入母屋造、檜皮葺きの繊細かつ優雅な授与所と全長48mの長さを持つ切妻造、本瓦葺きの雄大かつ力強さを表現した斎館(緑黛殿)を建て替え、同時に社務所をはじめとする事務や執務の諸機能を新たに加え、さらに外部空間を再構成した。青木石の「絶対垂直」の擁壁、「船」に見立てた全溶接の厚み12~24mmの鋼板フラットスラブと壁柱による人口地盤を象徴的に表現した。大階段により現れた、地下のレベルとひと続きのガラスと鉄に囲まれた中庭と、光と闇、人口と自然、水平と垂直、山と谷、空と地面等々の異種両極をさらに際立たせる。
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圧巻はこの2つの建築の接地性にある。本宮に向けて階段を上り詰めるにしたがって現れる無垢の御影石が隙間なく垂直に立つ擁壁と、厚みが12~24ミリの鋼板フラットスラブと壁柱がつくりなす人工大地の上に作られた檜皮葺きの入母屋造りの参集所はあくまで優雅である。一方、中庭を隔てて山腹に半ば埋まるように作られている斎館棟は本瓦葺きの切妻造りの屋根が力強いが、この建築も鋼板柱と鋼板フラットスラブに支えられている。随所に見られる鋼板は時と共に茶色の鐡錆を見せており、これが大地の一部になっているかのような表情である。大胆で端正なディテールが建築を支配している。部分が全体であると同時に全体が部分である新しい建築と、それが加わることによって造られた環境は、世紀を超えた建築の芸術性を見せてくれる。AACA賞にふさわしい建築である。