一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2008 奨励賞大阪弁護士会館
AACA賞2008 奨励賞
大阪弁護士会館

 大阪弁護士会館は、基本的人権の擁護と社会正義の実現のためさまざまな弁護士会活動を行う場として、活動の透明性、市民へ開放性、組織の永続性、また環境配慮という弁護士会の理念を建物全体で表現した。
外観の特徴はガラスボックスを覆う構造体である柱と梁の格子表現である。柱と梁は最新の制震技術と耐火安全検証の成果として450mmX450mmの細く繊細なもので、大型陶板で覆われている。低層部の煉瓦も微妙に異なるムクリを持つ煉瓦で構成し、さらにひとつひとつ出入りをつけ積み上げることで、通常のレンガでは得られない深い陰影を備えることができた。時を経るにつれて深みを増す焼き物の陶板と煉瓦をシンプルに使用することで、素材感をきわだたせている。エントランスロビーの透かし煉瓦スクリーンは、1階ロビーからは遮蔽効果、2階ホワイエからは採光効果を与え、それぞれ異なった表情を醸し出している。

作 者:(株)日建設計 江副敏史

選評
 大阪中ノ島公会堂を見渡す、水と緑に恵まれた立地を十二分に生かした建物である。大型陶板に覆われた細く繊細な柱と梁の格子で、透明性、開放性を端的に表したり、ムクリのある透かし煉瓦スクリーンで光を取り込むなど、弁護士活動に対する敷居の高さを取り払う役割を果たしている。不揃いな色や微妙に異なるムクリのある素材を使った繊細な格子の建築デザインは、建築の個性を形作るだけでなく、隣に建つ裁判所との連続性、向い側に建つ中ノ島公会堂地区の景観を結び付ける役割をも果たしている。格子の内側のガラスを通して中の光が透けて見える建物の夜景も素晴らしいことが容易に想像できる。
惜しむらくは、高い天井の1階ロビーに設置されているアート作品のボリュームが小さく見える点である。空間とアートがマッチしていたらと、建築が素晴らしいだけに残念である。今回のように建築引き渡し後にアート作品を置く場合にも、施主、アーティスト、建築設計者双方に何らかの相談をするような取り決めが望まれる。
選考委員 近田玲子