一般社団法人 日本建築美術工芸協会

一般社団法人 日本建築美術工芸協会

sitemap
AACA賞
AACA賞2008 奨励賞グランドプラザ
AACA賞2008 奨励賞
グランドプラザ

 富山市の中心部からスクランブル交差点が消えて久しい。グランドプラザは、空洞化した都市に、人を集め、賑わいを取り戻し、都市を再生しようという意思のもとに市によって作られた屋根つきの公共空間である。東西の商業施設と北側の既存アーケードに囲まれたガラスのガレリアであり、3階と6階のブリッジで駐車場ビルと商業施設が関係づけられている。グランドプラザの主役は何といっても人間であり、そこに集う人々やアクティビティそのものである。建築はそれらの背景であり、そこで活動する人たちが生きいきと見えるような建築が意図されている。そしてモバイルグリーンの爽やかな緑が街に潤いをあたえている。2007年9月17日のオープンから一年。とやま街なかルネッサンス・富山水辺の映像祭with HeArt Nagasaki・NHKまちなかテレビ生中継などを始めとする118回ものイベントが行われ、さまざまな活動の拠点となっている。

作 者:(株)日本設計 淺石 優

選評
 南北65m東西21mの『グランドプラザ』は、別々の二つの再開発ビル計画に伴い、市が主体となり数本の路地を統合して創出した画期的な広場である。
高さ19mに透明ガラスの屋根と鎧葺き様の壁を架けることで、現代的な表情を持ちながら雨の降らない爽やかな風の流れを体感できる公共空間として、雪の多い富山の市民に明るい陽射しが差込む開放的な「まちなか新空間」を提供している。大屋根の下には「モバイルグリーン」と呼ばれる自然木の巨大な可動式樹木が数台。床下収納された昇降式ステージは設備備品倉庫を兼ねるなど、活動を妨げない様々な仕掛けが工夫されている。1400㎡の床全体を使った「お絵描きプロジェクト」や予想を超えた市民のアイデアで、あらゆるジャンルや年代の人々の活動が展開されたり「ガラス屋根清掃隊」なるボランティアが生まれたという。単に屋内化された大きな施設や大型設備や展示物に頼るのではない、市民自身の手による活動する公共空間として、また都市だからこそ求められる自然を感じる環境を心地よく自由に享受できる場として、たくさんの老若男女が集う活気に満ちた都市型広場の素晴らしい事例として評価した。
選考委員 藤江和子