AACA賞2010 AACA賞|当間高原リゾートベルナティオ la Sala/FIORIA
AACA賞2010 AACA賞
当間高原リゾートベルナティオ la Sala/FIORIA選評
円形水盤上に、今飛び立たんとする四角錐が絶妙のバランスで爪先立つような佇まい。その屹立する一面が解放されて、三角多面体が空気や光を含んで空間を形成し軽やかに在る。内部は此の土地で親しみ愛でられるカキツバタの花冠と雪の結晶からイメージされ紐解かれた六角形の紋様が隅々にまで施されて微妙な透過の濃淡を生んでいる。それは真っ白なオーガンジーに、紋様が陽光に輝く雪の表面のような特殊技術によりプリントされた布である。精緻に組まれた木骨に巧妙に埋め込まれたLEDの光によって、微かにきらめき浸透させながら繊維を透した光の解像度を微妙に変化させて新たな濃淡の表情を浮かび上がらせ、無限のグラデーションを内包する空間となっている。溶け出ていた光の形は落日とともに表出し、水滝の光と対峙してやがて漆黒の円盤上に屹立する。幾何形態の集合の造形は、建築、テキスタイル、照明デザイン、木工技術の密實なコラボレーションによって、緊張感と優しさ、精密さ、華やかさが一体となって美しく感動的。
AACA賞に相応しい珠玉の空間である。
選考委員 藤江和子
| AACA賞 TOP |