AACA賞2011 AACA賞|宇土市立宇土小学校
AACA賞2011 AACA賞
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スラブがL形壁と僅かな丸柱で支持され、内外部は全て折戸で全面開閉可能。5つの中庭を孕み35の教室や諸室、体育館が巧みに構成されて限りなく透明で、子供達の活動を空間的に規定するものがない解放された自由な空間だ。厚みのあるL型壁はL.Kanhの「一本の木の下に教えることができる人と教わりたい人々が集うことが学校のFORMである」というフレーズの「一本の木」だという。壁はグリッドの秩序に乗りながらも慎重かつ丁寧にずらしをかけた配置で、教室としての閉じる事と開放との巧妙な調停がなされ、次々と誘導されるように連続して繋がる空間は、平面図から想像するより遥かに開放的で壁の存在を感じない。床に這いつくばって絵を描く子や雑巾がけの子、遠くで群れ遊ぶ子供達のアクティビティが重層して生き生きと展開する様が見透せる。
学校建築設計の豊富な経験と挑戦の積み重ねに裏打ちされた細やかな工夫は、児童の新校舎に込めるメッセージをボイドスラブに埋めるワークショップや、ピンナップレールや手で研ぎ出されたテラゾの水場や家具オブジェなど随所に込められて、子供達の創造性や根源的な欲求への作者のまなざしは深く優しい。最も顕著なのは、L形壁がカーブしていることにあり、曲面によって優しく美しく光をひろい風を誘い人々を迎え包んでくれている。この壁の柔らかいしっかりとした存在は、テクスチャーやディテールと共に母に抱かれるような安らかな優しさを感じるのである。
『建築が人を育てる』
精神的身体的感覚と呼応する空間こそ、人々の心を動かし作用するのであり、宇土小学校はまさにそういうに相応しい建築である。