AACA賞2011 芦原義信賞(新人賞)優秀賞|長楽寺禅堂
AACA賞2011 芦原義信賞(新人賞)優秀賞
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高床式架構、大屋根自然通風などの伝統建築の要素を現代に置き換えて表現する手法が取られた。近づくと、キャンティレバーの跳ね出しで作られた高床式架構の上に、ボリューム溢れる白漆喰の細長い坐禅堂が浮かび、視線の抜けた先には陽光が当たった生け垣の緑が見える。瑞々しい緑と無垢の白、開け放たれた空間と閉じられた空間の対比が見事である。
新しい坐禅堂に求められた、本堂を囲む歴史的な景観との調和、宗教建築としての高い精神性を持つ空間の創造は、3.11の大震災でもひび割れ一つしなかった白漆喰壁の選択によって果たされたと言っても過言ではなかろう。その清浄感は、坐禅堂西側の住宅や北側の駐車場が立ち並ぶ雑然とした景観をも浄化する役割を果たしている。大屋根はハイサイドライトを介して白漆喰壁の上にふわりと浮かび、深い軒の先は白漆喰壁への雨垂れを防ぐシャープなエッジで整えられている。 集会にも使われる二階の坐禅堂は、床面から外気を取り込みハイサイドライトを開けて逃がす自然通風に加えて、大きなガラスの片引き窓を開けて風を取り込むことも出来る。表現手法、素材の扱い、細部のディテールのどれもが設計者の豊かな経験、職人の確かな腕を物語っている中で、残念なのがキャンティレバーの力強さを削ぐ太いガラスサッシュである。もっと細く開閉部を少なくすることで、太い柱から解放された空間の美しさと緊張感を、より強く表現出来たのではないかと惜しまれる。