AACA賞2012 奨励賞|発展の塔(理化学研究所 計算科学研究機構 シンボルモニュメント)
AACA賞2012 奨励賞
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そのイメージを0が16つながる17桁のそろばん玉で造形した。高さ8.6メートルのブロンズの黒い作品で、玉の直径は76センチ、先端を金色で仕上げた。
一つ一つのそろばん玉には、洋数字や漢字で数の単位をレリーフで記すなど、工芸的な手作り感も加味されている。
神戸市のポートアイランドは、海に突き出した巨大な人工島だ。その突端に立つ理研の研究機構ビルのために発注され、一帯の広場の整備計画にも設計段階から参画し景観づくりに留意した。
その結果当初予定された設置場所をかなり移動するなど、アプローチの間隔もよく訪れる人の目を引きつける。それだけに、背後の鉄筋コンクリート6階建ての開口部の少ないビルの壁との位置関係も、ほどよく調和されているように思える。
要するにスーパー・コンピューター「京」のシンボルとして、そのイメージを造形するという制約のなかで、目一杯わかりやすく親しめる要素を盛り込んで、発注側の理研の注文にも應えた作品なのである。
その作者が平櫛田中賞など彫刻の大きな賞の受賞を重ね、東京芸術大学の教授をつとめた、実績のある米林雄一であるのにはいささか驚いた。普段見慣れた完全に自由な抽象彫刻と異なる、テーマに即した、オーダーメイドのモニュメントで、AACA賞に敢えて挑戦したからである。その心意気を、私は多としたい。
どうも、建築作品に偏りがちという声もあるなかで、こうした仕事が参入したことが、今後、アート側からの応募への呼び水になることを期待する。