一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2012 奨励賞龍谷ミュージアム
AACA賞2012 奨励賞
龍谷ミュージアム

作 者:(株)日建設計 大阪オフィス 赤木 隆・下坂浩和

写真撮影 東出清彦

写真撮影 近代建築社
写真撮影 東出清彦
選評
 龍谷大学は、江戸時代初期、西本願寺に誕生した長い歴史を持つ学校である。
 「龍谷ミュージアム」は大学の創立370周年を記念する事業の一環として建設された。
 宗派にこだわらず、広く仏教の誕生から現代の仏教までを総合的に紹介することをその開設の趣旨としている。敷地は世界文化遺産の西本願寺と堀川通をはさんで向かい合う位置にある。敷地の反対側、東側には油小路通にそって門前町が広がる。京都の景観条例では伝統的な街並みを護るため、高さ(15m)や形態について厳しい規制が定められている。その範囲内で最大限のボリュームを実現するための様々な工夫が凝らされていて、豊かな街並みづくりに貢献することができた。大きな閉じた空間である展示室を2、3階に配置して浮かせたことで、
 1階には視線が通り抜ける透明な空間が出来あがった。そこには大通りと小路をつなぐ路地が作られていて、一般の市民が心地よい空間を歩いている。高さ制限で上限を抑えられているため、ロビーの空間は中庭とともに地面より下方に広がっているのだが、通り抜けの路地と一体になった、地下であることを忘れるような豊かさを感じさせてくれる。
 随所に見ることができる洗練されたディテールは、モダンなデザイン手法でありながら京都の伝統をそこはかとなく表現している。展示空間にも同様にプロの精神が行き渡っていて、危なげのない安心感を持たせてもらえた。セラミックルーバによる正面のすだれは国宝「西本願寺三十六人家集」にある文様から摂られた曲線を用いているのだが、全体に流れる「京都的モダン」のデザインの中ではやや浮いているようである。しかし全体には建築の玄人を感じさせる秀逸な作品である。
 作者は、芦原義信賞を町並み貢献のものと理解して応募したということなので、あえてAACA賞の対象として審査を行った。
選考委員 可児才介