一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2013 AACA賞ジェームス邸と周辺の景観のサスティナブルな存続
AACA賞2013 AACA賞
ジェームス邸と周辺の景観のサスティナブルな存続

作 者:中村圭祐((株)竹中工務店 大阪本店設計部)

所在地:兵庫県神戸市垂水区塩屋町6-28-1

選評
 明石海峡を挟んで淡路島を塩谷の丘陵地は通称「ジェームス山」と呼ばれている。
 神戸生まれの英国人貿易商A・W・ジェームス氏(1889-1952)によって、昭和恐慌後に開発された外国人専用の住宅地である。1934年ジェームス山の南部に建てられたジェームス氏の自宅は竹中工務店の設計・施工である。設計を担当したのは昭和初期に活躍した技巧派モダニスト早良俊夫である。広大な敷地の北側に母屋を東西に長く配置し、クリーム色の土壁や丸みを帯びた玄関のポーチ、建物中央の円筒形の塔屋は典型的なスパニッシュ・スタイルである。ジェームス氏の死後、大企業の創業者が自邸として購入し、その後、迎賓館に転用されていたが、近年の経済状況によってその存在が難しくなっていた。
 しかし行政、住民、所有者、事業者、設計・施工の一致した保存活用への熱意によって、新たなる存続方法が模索されることになる。紆余曲折の末、飲食・ウエディングを主とした施設として活用することになるが、それは飽くまでもこの施設の持つ環境と建築の歴史的価値を将来に亘って活かすためであった。これを機に内部はオリジナルの姿を復元し、主屋を中心に隣接するバンケット棟は高さを主屋の3階の軒高に合わせ、海側のチャペルは廻りを水盤で囲み、主屋からの眺望を遮らないように繊細な構造とガラス張りにすることによって、海と一体的なランドスケープを活かした施設の配置を行っている。数々の法的制約を乗り越えて歴史的建築と景観を継続維持して行く仕組みを構築し、このプロジェクトを実現した関係者の努力に心から敬意を表すものである。
選考委員 岩井光男