作 者:(株)栗生総合計画事務所 (建築) (株)丹青研究所 (展示) (株)中田捷夫研究室 (構造) (株)プレイスメディア (ランドスケープ) ライティングプランナーズアソシエーツ(株) (照明) (株)テクノ工営 (設備)
所在地:三重県伊勢市豊川町前野126-1
圧倒的な存在を示す内宮と外宮。広大な神宮の杜の自然景観。二千年にわたる日本の記憶を伝える伊勢神宮の時の重みのなかに、現代の建物をどう位置づけるのか。
そもそも現代建築は、素朴な力をみなきらせる125の神々のやしろに太刀打ちできるのか。作者は建築家冥利に尽きるこの博物館を「遠・中・近・触景からとらえる重畳(幾重にも重なること)の空間概念」によって、正面から、まことに素直に作り上げた。
空間計画が素晴らしい。外宮を訪れた参拝者は参道と並行して作られた休息舎の透明なガラスの奥に広がる勾玉池の静謐な自然景観を体感できる。建物の前面に広々と視野が開けた勾玉池の水の修景に加えて、緑にあふれた伊勢神宮の自然景観に溶け込ませることができた。一方、資料館本体を参拝軸線と直交させることにより、参道を行き交う参拝者に建物のボリュームを見えにくくしている。また、やしろと同様の勾配をつけた長さ11.5m、幅約60mにわたる鋳鉄製の屋根の素材感、重量感によって、現代建築を簡潔で重厚なやしろに溶け込ませる視覚的効果を作りだした。展示室では神宮直営で作られた実際の外宮正殿の妻面原寸大模型によって、神のやしろの迫力を間近に味わえるのに加え、式年遷宮と共に新しく作り直される神宝とその匠の技を見ることができる。