一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2013 特別賞翼竜のたまご
AACA賞2013 特別賞
翼竜のたまご

作 者:坂上直哉

所在地:愛知県名古屋市昭和区八事本町101-2

選評
 宙に浮いた巨大なたまごは飛行船を思わせる。翼竜のたまごと題したこの作品は中京大学名古屋キャンパス新1号館アトリウムに浮いている。変形三角形を平面とするアトリウムは1階から上層階まで吹抜け視界が開けている。外部に接する面は総ガラス張り、天井からは陽の光が差し込む。天井には鉄骨の巨大な竜骨が差し渡り、天井空間を支配している。そんなアトリウム空間の活性化を依頼された作家(デザイナー)は、天井に走る竜骨を翼竜の胸骨に見たて、「翼竜のたまご」と「翼竜の脚」を発想したという。「卵はやがて孵化し大空に羽ばたきながら飛び立っていく」という学生たちの姿と重ね合わせたコンセプトだ。長手方向に5mにおよぶたまごは5mm厚のステンレス板と3mm厚のアルミのパンチングメタル板を、3次元加工した部材を組み合わせて成形している。それはかなり高度な職人技がなせる仕事と思われる。竜骨から伸びたFRPによる翼竜の脚が、このたまごを吊り下げた形態をとってはいるが、総重量1.2トンのたまごをみごとに宙に浮かせて見せている。アルミのパンチングメタル部分は透けて見え、差し込む陽の光により移動をともなってモアレ現象が生じ、生きた卵を感じさせる。

 翼竜のたまごはアトリウム空間に居場所を得て、空間全体に緊張感をかもし出し、魅力的なアート空間を創出している。施主と建築設計者の理解と協力のもとに作家の制作意欲とその意欲を可能にした職人集団と職人の技が光るアート作品である。作家(デザイナー)と同時にプロデューサーにも拍手を送りたい。
選考委員 日高單也