作 者:株式会社 三菱地所設計 取締役社長 大内政男 東京大学大学院工学系研究科 隈 研吾 建築家 今里 隆 石井幹子・石井リーサ明理+株式会社石井幹子デザイン事務所
所在地:東京都中央区銀座4-12-15
本施設がすぐれている点は次の三点に集約されよう。
第一は歌舞伎座の再生である。「新しいけれども、懐しい」と役者が語るように、岡田信一郎、吉田五十八のそれぞれの設計思想を反映させて、先代歌舞伎座の空気感を残しながら、新たな生命を吹き込むことに成功している。バリアフリーへの対応、音響反射板の導入等をはじめとして、内外装のデザインでは現代の素材・工法を用いながらも伝統的和風劇場としての設えを守っており、世界無形文化遺産である歌舞伎の殿堂に相応しい華やかさを纏わせた。
第二は都市空間の再活性化である。「歌舞伎」の複合文化拠点であると同時に、地域の防災拠点としての役割を担わしている点は大いに注目されるべきであろう。そして多くの都市環境・自然環境への取り組みは、劇場機能をこえて都市空間の再活性化に大きく貢献している。
第三は現代の芝居町の形成である。多用な目的で訪れる人々に対して、複合的機能が有機的に連携し、周辺の店舗を始めたとして地域全体の活気で満ち溢れている。
かつて江戸の町にあった芝居小屋が形成されているといえよう。
以上の諸点からみても、建築・都市・美術・工芸が一体となったプロジェクトとして高く評価されるものであり、AACA賞の特別賞として顕彰に値する。