一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2016 優秀賞MIZKAN MUSEUM
AACA賞2016 優秀賞
MIZKAN MUSEUM

作 者:小川大志・髙橋 勉
(株)NTTファシリティーズ

所在地:愛知県半田市中村町2-6

選評
 MIZKAN MUSEUMは半田で創業し、この地を拠点に200年以上酢づくり事業を続けているミツカングループの企業ミュージアムである。 周囲は水運を利用して酢を運ぶ船が行き来していた運河沿いに黒い下見板張りの旧工場の建物が立ち並び、半田市の特徴的・代表的な景観となっている。 この歴史的な景観を継承するという課題を、三州瓦の屋根、外装の3種類の縦型アルミスパンドレルやガラス窓、鉄骨とRCのハイブリット構造の採用など現代の素材、工法を用いながらも従前の趣のある街並み景観を丁寧に的確に再構築している。特に建物の表情は従前の黒塗りの下見板張りの趣を感じさせ、周囲の景観に良く調和している。また、自然換気システムであるトロンベウォールシステム、酢の生産で使用していた井戸水や太陽熱温水を利用した空調システム、工場の煙突を再現した自然換気装置など特徴的な環境への取り組みが行われ、この場所を訪れる人たちが実際にそれを体験することができ環境意識を醸成する場ともなっている点や、 展示室内部に旧醸造所の小屋組みを再構築することでこの場の時間と空間を体験できる点も高く評価できる。平面計画は水景のある中庭を囲む形で連続して展示室が配置され、所々で運河や中庭の景観を見ることができ光を感じることが出来る構成になっており閉塞感もなく心地よく回遊できる展示空間である。展示ルート最後の中庭に面して広がりのある「光の庭」は開放的で明るい展示空間であり、中庭の空間と連続し一体感ある空間を創り上げている。このミュージアムは半田市の景観形成重点地区のエリア内にあり、現在その中核施設として企業文化を伝える場のみならず半田市の歴史・文化を伝える場・半田市民の交流の場として活発に活用されており、さらに機能することを期待したい。
選考委員 東條隆郎