一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2016 優秀賞ヤマノイエ
AACA賞2016 優秀賞
ヤマノイエ

作 者:建築:津野建築設計室 津野恵美子
外構:田賀意匠事務所 田賀陽介
照明:コモレビデザイン 内藤真理子
テキスタイル:安東陽子デザイン 安東陽子

所在地:非公開

選評
 設計密度の高さがつくりだす濃密な質感と豊かな自然と連続する大胆な開口部、それを実現する繊細な構造等がもたらす不思議な空気感の建築である。堅固で硬いRCの斫り仕上げの外壁と擁壁の構築的構成と、変化する斜面地に調和し折れ曲がりながら展開するおおらかなバラックのような、しかし周到に計画された薄板構造の柱梁による木造建築が絡み合うという不思議な魅力を持つ建築である。
 しかし設計者の力量の高さはその外観以上に内部空間で発揮されている。美しい自然の外部空間を楽しむための人の居場所を、きめ細かいディテールを持つ完成度の極めて高い家具によって随所につくり出している。ソファーに座った時、窓辺のベンチに腰掛けた時等、手に触れる家具の素材の肌理とディテールが心地よい。設計者と家具職人との対話が感じられるようだ。建築も家具も建具や布も共に人々に奉仕する美術、工芸であるという原点の豊かさを思い起こさせてくれる。利便性を追求した工業製品に囲まれた即物的「建物」には無い、懐かしい豊かさに包まれている。特に寝室周りの空間はそのスケール感、プロポーションが心地よい。
 リビングスペースは欅の大木を囲むように高い天井と開口部を持つ段状の空間が折れ曲がり、変化に富む景色と居場所をつくり出している。それは研修のような時に幾人かがそれぞれの居場所に佇んでいる時にその真価が発揮されるであろう。
 工芸的家具職人、デザイナーなどの真摯な協力者との共同による設計密度の極めて高い優れた建築であり、優秀賞に相応しい作品である。
選考委員 堀越英嗣