一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2016 優秀賞織物の茶室 ~下鴨神社・糺の森~
AACA賞2016 優秀賞
織物の茶室 ~下鴨神社・糺の森~

作 者:橋口新一郎

所在地:京都府京都市左京区下鴨泉川町59

選評
 ユネスコの世界遺産に登録されている京都・糺(ただす)の森にある直線的な馬場は、毎年、葵祭の祓い清めの神事として流鏑馬(やぶさめ)が執り行われる。
 両側に落葉樹の大木が連なるこの空間にインスピレーションを得たと作者は言う。しかし、この作品の真骨頂はそうした固定的な属地性よりも、作品自体がおかれた場所の環境との間で発生する視覚的なアンサンブルにあるように思われた。そのビジュアルな重奏の媒体は、いうまでもなく幾重にもていねいに織り込まれた白く繊細な糸がつくるおぼろげなスクリーンとそこに映る自然の光そのものである。内部の寸法は、大人二人が座るといささか窮屈なのだが、外部との間に存在するこの半透明の被膜を通して見える外部の情景が、内側のスケール感覚を外へと解き放ってくれるから、不思議な居心地のよさを醸し出すようだ。
 いる。内側に居て、うつろう光に柔らからく包み込まれているような感覚は、その時々の太陽光の状態によっても変化するはずだ。だから、季節によっても、時刻によっても、天候によっても、上空を覆う木々の緑の状態によっても、ことなる感覚を楽しむことができるだろう。そのことに気がつくと、誰もがこの茶室を「あの場所」に置いてみたらどうだろうか・・・・などと想いを致す様々な場所が脳裏にうかぶ。それほどに、見る人、使う人の想像力をかきたててくれる作品である。
選考委員 宮城俊作