一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2016 奨励賞TSURUMIこどもホスピス
AACA賞2016 奨励賞
TSURUMIこどもホスピス

作 者:片瀬順一・出口 亮 (大成建設(株)一級建築士事務所)

所在地:大阪府大阪市鶴見区浜1-1-77

選評
 広大な緑地と市民のスポーツや憩いの場であふれる大阪・鶴見緑地公園の一角。かつて花博会場入口となった鶴見緑地駅から歩いていくと晴天の下、サッカー試合の子供たちの元気な声とドッグランの犬の鳴き声に包まれて、そこに家々が集まることで生まれるひとつのまちのような風景が現れた。公園に開かれた敷地の道に導かれるように、家々をつなぐ道の空間にたどり着く。子どものスケールに合わせるように、木の梁が低くのびやかに弧を描きながら連続するこの空間は、構造体そのものが空間となっている美しさと共に、親密さやぬくもりが感じられた。
 そもそもこの建築は日本初の「コミュニティ型こどもホスピス」という、難病の子どもと家族に当たり前の日常を提供する民間による慈善活動の場で、寄付金によって建設・運営され無料で利用できるという新しい取組みである。「家であるだけでなく、村のような場所」という全体コンセプトの元、6つの家と道の空間という地域に開くことのできる建物構成や木架構の構造計画、家型を象徴的に見せる屋根や外壁のディテール、遊び心あふれるインテリアや多様な素材選定、柔らかいサインや子どもたちのピクトグラム、更にはデザイナーとの協働による家具やカーテン、照明デザインに至るまで、丁寧に全体として統合されている。穏やかで居心地の良い空間でありながら、特別な空間であることが感じられるのは、設計者の子どもと家族に対する思いやりや愛情から来ているのかもしれない。
 この建築が第2・第3のコミュニティ型こどもホスピスの道標になり、日本全国に拡がっていくことを願うばかりである。
選考委員 斎藤公男