作 者:事業主・アート企画:(株)西武プロパティーズ 設計・監理:(株)日建設計 外装デザイン:Kohn Pedersen Fox Associates P.C ランドスケープデザイン:PLACEMEDEA Co.Ltd アートディレクション:(株)織絵 アートコンサルティング:森美術館
所在地:千代田区紀尾井町1-2
この地は江戸期には、紀州徳川家、尾張徳川家、彦根井伊家の屋敷があり、各家名から「紀」「尾」「井」の一字をあて町名にされた。近くには皇居や迎賓館もあり、都心にあっても奥深い緑がのこっている。まことに由諸正しき歴史を感じられるところだ。
パブリックアートのコンセプトは、歴史ある「時」行き交う「人」「緑」ある空間とある。
「水の広場」は3つのビルに囲まれた中心の広場に白く輝いた大鹿が立っている。素材はアルミで鋳造し、メタリックホワイトで塗装したものだ。古来より鹿は「神使」・「神獣」と称され親しまれてきた。神秘的な雰囲気があり良例といえよう。
咲き誇る花からのイメージを構成的にまとめた「花の広場」(桜、桔梗、朝顔)と蝶々の形を立体化した大型のオブジェだ。素材はステンレススチールで構成し、カラフルな色調で塗装し目を引く存在となっている。年に一度の祭礼時にはお御輿も登場し、地元と一体になって賑やかな広場となろう。
「空の広場」大小のリングがリズミカルに連なり、軽やかなかたちをめざしたと、作者の意図にあるが、オブジェは対照的に粗粗しい。鋼鉄を溶断してリングを切りだし立体化したものだ。作者の一貫した創形性がひきだされている。願わくはもっとスケールが欲しかった。
「紀尾井タワー」オフィスエントランスの吹抜けの天井から、「空の記憶」が吊り下げられ、空気の流れに反応しゆるやかに揺れていた。チタン合金の溶接で線状がリズミカルな構造的美しさを引き出している。敷地内には9ヶ所にオブジェがあり、それぞれの作者の意欲は感じ取れた。
さて、パブリックな場に作品を設置する場合、その先に解決しなければならい事もある。作品設置が終了でなく、オーナーやコレクター側と制作者が話し合い、その後のメンテナンス計画など検討され、末長く人々に愛される広場となるよう希望したい。そして今回の特別賞がその良き好例となるよう願っている。