一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2017 優秀賞星のや東京
AACA賞2017 優秀賞
星のや東京

作 者:(株)三菱地所設計 林総一郎
東環境・建築研究所 東利恵
(株)NTTファシリティーズ 一法師 淳

所在地:東京都千代田区大手町1丁目9-1

選評
 東京の中心の大手町に『連鎖型都市再生プロジェクト』の一環として建てられた「日本旅館」で、林立する超高層オフィスビルに囲まれて、角丸の重箱を重ねたような18階建ての外観は、伝統的な江戸小紋の鋳物スクリーンをまとって建っている。ビジネスや観光で訪れる海外からの客に、日本の文化を伝えることをコンセプトにしていることは、一目で伝わるしっとりとした落ち着きのある佇まいである。入り口を入ると、天井高5Mの細長い空間が迎えてくれる。大きな左官壁と栗の木の透かし模様の対面壁は下足箱であり、全ての客はここで靴を脱ぐ。1階のエントランス、2階のレセプション、3階の免震層から上層がラウンジ付きの客室階が、最上階に浴室露店風呂などのフロアーが積層されている。内装の様々な工夫により、宿泊客は、滞在中はそれら素材を通して五感を刺激される体感を覚える仕掛けが満載である。沓脱ぎの瞬間から、畳の床を歩くという体験は、もはや日本人でも新鮮である。この足裏の感触は、EVから廊下、客室全てに途切れなく敷き込まれ、日本ならではの作法をとおして身体に直に作用する経験をすることになる。 床仕上げに限らず内装や家具調度にも、いろいろな日本の素材が使われている。桐や栗、竹などその特徴を生かした新しいデザインに職人技術が遺憾なく発揮され、レストラン階では、地層を表す左官壁や作為のないフォルムの淡路石が点在して、日本的な凜とした静寂の庭園造形を彷彿とさせる空間となっている。
 構えた美術作品を飾り並べるのではなく、都市計画から建築、内装、家具、調度備品まで、運営ソフト、設計、施工の協労を重ねてきた星のやチームによって、一連の連携が蜜実に繋がり高まって「星のや東京」ができた。
 日本の建築美術工芸が一体となった日本の宿泊施設の新しい姿といえ、AACA優秀賞に相応しい作品である。
選考委員 藤江和子