一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2017 奨励賞特別養護老人ホーム 成仁ハウス 百年の里
AACA賞2017 奨励賞
特別養護老人ホーム 成仁ハウス 百年の里

作 者:(株)内藤将俊建築設計事務所 内藤将俊
(株)佐藤総合計画 前見文武

所在地:岩手県大船渡市立根町字宮田9-1

選評
 新幹線の一ノ関駅からレンタカーを駆っておよそ1時間40分、峠をいくつも越えて陸前高田で太平洋を見る。現在も復興は道半ばといったところか。大船渡の街に入ると袋状になった大船渡湾に沿って北上する。盛川の河口から約4キロほど北に上ったところがこの作品の敷地だ。施設に面した川の対岸から見るととても目立つ。真っ白な壁に楽しげに穿たれた開口を持つ、形の単位をいくつも集合させ、伸びやかな全体の姿ができている。鄙びた谷あいの街に新しい風景が現れた。
 今後の老人ホームのプロトタイプを創るため、ユニットケア型のさらに新しい在り方を目指して挑戦したプロジェクトである。様々な、あれもこれもと工夫を徹底的に凝らしている中で、最も印象深いのが、入居者一人一人の個性や生活のリズムを尊重した、顔なじみの介護スタッフによる個別ケアの在り方だった。
 一つのユニットでは10~11人が生活する。トイレが付いた「完全個室」、他の居住者や介護スタッフと交流する「共同生活室」、それに浴室等の「衛生エリア」から成り立っている。共同生活室は「だんらんの居間」「仕事スペース」「台所」に分かれているのだが、それぞれの空間の境には壁等の仕切るものは一切なく、切妻型の天井の向きによってうまく区切られているのが興味深い。
 このユニットはちょうど「むら」のような場所で、これがフロアに4つある。フロアの全体を「まち」と考えて中央に広場状の空間を置くというユニークな発想で、通常は長くなって床面積を大きくさせてしまう廊下を、なくしたことが特徴だ。
 またすべての個室において窓から互いが見合うことはなく、眺望が豊かで、日光や通風も確保されている。個室群は雁行型、全体は十字形の平面という計画がその効果を高めた。10mの高さ制限の中、天井の形状に変化を持たせることで、入居者に場所認識を高めさせると同時に、梁型をかわしたり設備用の空間をうまく確保することが可能になった。少ない素材を変化のある使い方をすることで、あたかも豊かな装飾があるように感じさせてくれる。施設の運営者と手を携えて作り上げた、新しいタイプの老人ホームである。
選考委員 可児才介