一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2018 芦原義信賞(新人賞)梅郷礼拝堂
AACA賞2018 芦原義信賞(新人賞)
梅郷礼拝堂

作 者:加藤詞史

所在地:千葉県野田市大殿井220-11

写真撮影 彰国社
写真撮影 加藤詞史
写真撮影 加藤詞史
選評
 埼玉県野田市に、秀逸な梅郷礼拝堂/ワンルームパビリオンを訪ねた。
 応永2年(1395年)に創建された寺院境内の別院計画である。
 このパビリオン外観の特質は屋根にある。日本の風土は伝統的な民家の様にその
屋根の信頼性と共に、厄祓いのシンボルとして「猪」を茅葺きでかたどった例もあると伝えられている。自然と対峙し環境と共生する屋根の形態があまりテーマにならない昨今、礼拝堂の作者は「屋根そのものが信仰の対象である…」とも言いきる。作者の模型による試作の日々は、一枚の紙に曲線を切り込むことによって出来る独自の曲面立体に収斂する。 この立体の特質は見る方角による表情が豊かに変わることである。自然を招じ入れる曲面の柔らかさから、スパイキーなシルエット、入口の正面性と奥の礼拝を暗示する二重のボリュームなど。採用された3角形状プランは「旧来の軸線の強い宗教空間を踏襲せず…」堂内に入ると軸線が少し振れる事に気付かされる。
 内観の特質は連携する異形の組み柱である。垂直から水平へと連続する内部を支える細い断面部材の組み柱は6組×3方向 =18組。この3方向からの組み柱はジグザグ状にお互いが支え合い、天井中心では点結合ではなく微妙にずれて、正三角形をかたち作る相持ち構造である。「小さな材が助けあいながら、1枚の大屋根を支えている姿…」の美しさが祈りの天蓋。東西様式を超える普遍性か。厳しくジオメトリックであるにも関わらず、自然な心地よさを醸し出しているのは木質だからなのか、或いはジオメトリーが自然そのものだからなのか。 伝統的寺社木造建築が長年の経年変化、収縮などを考慮していたように、作者は独自の100年単位の木組み工法を提案している。既に様々なイベントを誘発し開かれた「民の施設」を目指す。構想から軒先などのシャープなディテールまで、手つくりの妙と力量を十分に味合わせて頂いた。
 さらなる作者のご活躍を祈念し、この度の芦原義信賞受賞を心からお祝い申し上げます。
選考委員 川上喜三郎