一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2018 奨励賞川崎技術開発センター
AACA賞2018 奨励賞
川崎技術開発センター

作 者:株式会社 三菱地所設計 林 総一郎

所在地:神奈川県川崎市川崎区殿町 3-25-20

写真撮影 (株)FOTOTECA 木田勝久
写真撮影 (株)FOTOTECA 木田勝久
写真撮影 (株)FOTOTECA 木田勝久
選評
 ラジオアイソトープの技術開発を行う公益財団法人の研究施設である。けして小規模な施設ではないのだが、多摩川の河口部にひろがる工業地帯、それも川沿いという立地の景観的スケールの中では、その存在感すら希薄になってしまいがちである。むろん、とりたててこの施設に建築的、景観的な存在感を求める必要はないのかもしれない。しかし、この作品ではそこに果敢にチャレンジし、きわめて優れた成果をおさめていることはまちがにない。
 施設のプログラムに強く規定されたであろう建築ボリュームの分節とマッシングを際立たせるファサードが印象的である。外装に用いられた発泡系化粧型枠を用いたPC板に施された凹凸は、一見すると、この景観的なスケールのもとではあまりに繊細であるかに思えるのだが、それが大面積にわたると意外にそうでもないことがわかる。おそらく、白色の塗装と自然光の効果を十分に織り込んだ結果であろう。
 もちろん、夜間の照明効果についても同様のことが期待できるはずである。 このファサードは、多摩川の河川堤防側だけではなく街路側についても適用されており、建築の量塊がしっかりと存在感を際立たせている。
多摩川と市街地とつなぐガラスのエントランスがつくりあげた透過性の高いボリュームもまた、同じような視覚的効果をもたらしているであろう。
工業地帯の景観的コンテクストを反映したデザインは、インダストリアル バナキュラ(industrial vernacular)という語でひとくくりにされることがある。
しかしこの作品はそれを一段高い次元にまで押し上げているように思える。 シンプルな装飾をまとったPC板のファサードは、文字通り工業的な印象を与えるに違いないのだが、そのスケールやプロポーションとテクスチャーは、工芸的な趣さえも醸し出している。
 ともすれば、多種多様な形、寸法、色、素材による工業的な造形要素がばら撒かれ、混沌とした様相を呈することの多い工業地帯の景観を、穏やかにしかし決定的に支配するだけの存在感を、この作品は発している。そのこと実感するのは、多摩川の対岸からの眺望景、あるいは羽田空港を離発着する航空機の窓ごしにみる俯瞰景の中なのであろう。
選考委員 宮城俊作