一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2019 奨励賞ACADEMIC-ARK@OTEMON GAKUIN UNIVERSITY
AACA賞2019 奨励賞
ACADEMIC-ARK@OTEMON GAKUIN UNIVERSITY

作 者:須部恭浩永山憲二/(株)三菱地所設計

所在地:大阪府茨木市太田東芝町1-1

写真撮影 三菱地所設計
写真撮影 三菱地所設計
写真撮影 三菱地所設計
選評
 追手門学院大学の新しいキャンパスは、創立130年記念事業として茨木市の工場跡地の一部6.4haに約3,600人が学ぶ施設として生まれた。初見は「茅葺き」の印象。懐かしさと共にその巨大な姿「方舟」、大胆な断面構成が私を現地に引き寄せた。
 ネット時代における大学施設の「賑わい」が課題であった。人を誘う引力を敷地近くの古墳に思い、古来の「神域」の神秘性に作者が注目したのは特異である。18ヶ月という短い工事期間、潤沢でない予算枠は、積層複合による1棟案に絞り込んだ。近隣周辺への対応策、高さ制限、本体の構造環境性能シミュレーションを経て、ジオメトリックな逆さ三角錐が生まれる。遺跡埋蔵調査期間を抑え施設の接地面積を最小にする為、三箇所の鋭角コーナーを頂部から奥深く斜めに切り取ればエントランスにオーバーハングの半屋外空間を生むことになる。
 象徴的な燻銀色の3層のボリューム「書殿」を大胆にも「方舟」の中心に浮かす。「書殿」を取り巻く5層のスリット状の吹き抜けを介して外縁三辺に講義室、教員室などの主要な大学施設を、内縁回廊にはオープン書架及びテーブルを配置して個人、グループのスタディーエリアに。この三層回廊は吹き抜けを介して「見る/見られる」相互の「賑わい」を演出すると同時に「身体的建築の胎内巡り」の体験を与えてくれる。エントランスレベルの無柱空間は入学式の式場にもなった。普段は学生、地域の住民に開放された正三角形の「賑わい広場」、「表舞台」である。
 垂直動線は重層建築の動脈であり空間の質を極める重要な設計要素であるが、ここではなぜか裏舞台に。ランドスケープはミニマム、垣間見る顕な構造体、三層回廊手摺のリニアーな照明光源は目に障り評価は分かれるだろう。最後に環境負荷を低減する工芸作品「桜型ステンレスキャストのスキン」は機能的なファサードであると同時に刻々と光に感応する美的ファサードでもある。さらなる進化を期待しています。
選考委員 川上喜三郎