一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2021 優秀賞那須塩原市図書館 みるる
AACA賞2021 優秀賞
那須塩原市図書館 みるる

作 者:一級建築士事務所 UAO株式会社

所在地:栃木県那須塩原市本町

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写真撮影 DAICH ANO
選評
近年、公共の図書館が純粋な図書機能を持つだけでなく、様々なイベントの開催など人が集まる交流機能も併せて持つ図書館が見受けられる。那須塩原市図書館「みるる」は、人が集まる機能に加え、さらにこの場から街へと新な流れが自然と生まれることを意図した施設である。この図書館は黒磯駅の広場に面し建てられている。そのファサードの全面ガラススクリーンが大きく開かれ、そのガラススクリーンの上に木製ルーバー状の軒天井を持つ多面体の屋根が軽快に存在している。このルーバー状の軒天井はそのままの形で内部の天井に続いている エントランスに入ると二階まで抜けるホールがある。エントランスに対し「ハの字型」に開かれた両側の壁に配置された5mを超える高さの木製の書棚と、2階に通じる緩やかに弧を描いた階段が、来館者を自然と迎え入れてくれているようだ。2階の外部から続く木製ルーバー製の多面体で構成された天井がさらに奥へと軽快に続き、木の肌の色合いとリズミカルなルーバーが気持ちを和ませる。
 一階には「みるるAve.」という「通り道」がある。黒磯駅と市街地とを結びつける人の流れを想定したパブリックな空間として設定されている。「通り道」から外部ガラススクリーンに向かって天井までフレームだけの書棚が放射状に配置されている。外からガラススクリーン越しに館内部の様子や人の動き・活動が手に取るように見え、街に対し開くというイメージが伝わってくる。また、ガラススクリーン沿いに「森のポケット」と呼ばれる多様な使われ方を想定した吹き抜け空間が点在し、その場にたたずむと二階天井の多面体木製ルーバーが垣間見える。大きなガラススクリーンから溢れんばかりの外光が降り注ぐとても明るく快適である。書棚1段の高さは通常より一回り大きく設えられ、フレームと本の間にゆとりがあり、遠くまで見渡せる。開放的でありながらも書棚と書棚の程よい「囲われ感」も心地よい。「通り道」からだけでなく、どこにいても読書をしている様子や市民による様々な活動が垣間見え、本を媒体にヒト・モノ・コトの自然な交流が生まれてくるように思える。
 二階は図書スペース、学習スペースなどがあり静的な空間である。天井の木製多面体ルーバーが大変美しく芸術的でもある。木製の書棚が低く抑えられ外周のガラススクリーンから柔らかな光が降り注ぎ落ち着いた心地よい空間である。
 西側の道路側は駅側からルーバー状の軒の折れ屋根庇と屏風状に折れた大きなガラススクリーンがリズミカルに続き、前面の歩道状の広がりの中の縁側や植栽の設えが街に開かれたイメージを創り出している。
 この「みるる」は内外共に大変魅力的な計画である。この新たなチャレンジ、建築や景観の有り様が、人を育み街の価値を高めることにつながると大いに期待できる作品である。
選考委員 東條隆郎