一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2021 特別賞有明体操競技場
AACA賞2021 特別賞
有明体操競技場

作 者:株式会社日建設計、清水建設株式会社、斎藤公男(技術指導)

所在地:東京都江東区有明

写真撮影 鈴木研一
選評
有明体操競技場は2021年夏に開催された東京オリンピックの体操競技会場、パラリンピックのボッチャの会場である。東京のウォーターフロント有明北地区に12,000人収容の仮設の競技施設として整備されたものである。また、この競技場の北側にある高速道路越しには、バレーボール会場となった「有明アリーナ」が見える。
この建物は屋根の架構、外壁、観客席などに主要な部位に木材を活用している。敷地の記憶として、元々「有明北貯木場」として使われていたことや、日本の「木文化」を広く内外に発信することを目的として木材を採用することにしたとのことである。また、国の方針でもある「脱酸素社会の実現に向けて公共施設における木材利用促進」にも合致している。
敷地は東雲運河に面し、大きな広がりのある空間の中に、美しい水平ラインの深い軒と高さを抑えた緩やかなアーチ状の屋根が大変印象的な風景を創り出している。さらには、外部のコンコースの深い軒に向かって反りあがる形状の木の角材を積み上げた外壁は軽やかに人々を迎え入れてくれるような趣がある。かなり大規模な建築にもかかわらず、その大きさを感じさせない。外壁の夜景の写真を見ると、ライトアップされた建物全体が浮かび上がる様は大変神々しく美しい。
最大の特徴は大きな屋根を支える「複合式木質張弦梁構造」であろう。90mに及ぶカラマツ集成材(1150×220)の連続するアーチと鋼製の小径のケーブル構成された張弦梁が軽快でダイナミックな大空間を創り上げている。高度に優れたな構造・施工技術がこの形を実現させているのである。また隅々まで洗練された木の使い方やディテールが木の持つぬくもりと合わせて、とても親しみやすい空間を醸成しているであろうと思われる。ただ、誠に残念ながら、今回のオリンピックではコロナ感染対応のためこの有明体操競技会場も含めほとんどの競技が無観客となったのである。しかしながら、日本選手が活躍した映像を通して、建物の様子や競技会場の雰囲気を感じ取れたのではないかと思う。
今後この施設は、内部を改修した後、東京都の展示場として利用される予定である。この施設の内外の空間を実際に体験できるようになることが大変楽しみである。
選考委員 東條隆郎