一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2022 優秀賞那覇文化芸術劇場なはーと
AACA賞2022 優秀賞
那覇文化芸術劇場なはーと

「なはーと」は那覇市のみならず、沖縄を牽引する舞台芸術創造拠点であると共に、市民の日常的な集いや交流の場を生み出すことを目的とした。 外観は、建物全体を織物のような皮膜で包むことで、住居と商業施設が混在する中心市街地の中で巨大な劇場施設を周囲のスケールと調和させた上で、新たな那覇の 顔となることを目指した。また施設は全方向に開き地域との繋がりを持たせると共に、沖縄・那覇地域独自の要素を取り入れた空間としている。
広場としての「ウナー(御庭)」を中心に、「スージグワー(路地)」のような通り抜け通路を設けて、賑わいと回遊性を高めた。 ウナーは3 層吹抜けで、練習室や劇場のホワイエが立体的に表れ、活動の賑わいに包まれる。 外観の皮膜は「首里織(花倉織)」の構成を再現することで、日差しや視線を和らげ、この場所ならではの景観をつくると共に、「アマハジ(雨端)」としての軒下空間を生み出し、人々を優しく迎え入れる。

作 者:香山・久米・根路銘設計共同体
長谷川祥久 兒玉謙一郎 根路銘剛次
望月麻衣 角沢聡子 岡本賢吾 香山壽夫

所在地:沖縄県那覇市久茂地

主要用途:劇場

敷地面積:9,736.54㎡ 建築面積:5,994.22㎡ 延床面積:14,576.26㎡

作品紹介ビデオを観る
隣接した街路と繋がり、柔らかく光が差し込む、外部空間のような屋内広場「ウナー」
写真撮影 小川重雄
施設を柔らかく包み込む首里織皮膜が、周辺環境と調和し地域のランドマークとなる
写真撮影 小川重雄
首里織皮膜が沖縄の強い光を和らげ、その織物の影が建物内部にも豊かな表情をつくる
写真撮影 小川重雄
選評
那覇市内中心部に近い久茂地小学校跡地に計画された大小二つのホールと練習室などからなる複合文化施設。表通りから一歩引き込まれた立地ですが、遠くから垣間見えるだけで、その外観の存在感に圧倒されます。何よりも執念にも似た情熱を感じさせるのが、その外観を覆う最も高貴とされる首里花倉織をモチーフとしたスクリーンで、HPC(超薄肉コンクリート板)を二度に分けて打設して製造されています。とかく閉鎖的な量塊になりがちなホール建築にあって、透過性を持ち、また沖縄の光の中で細かい陰影を生み出す独特な外皮となっています。内外に用いられたすべて既成のパターンのものだそうですが、沖縄独特の花ブロックの壁面とあわせて、立地する沖縄の風土を感じさせる造形となっていました。
プロポーザルの段階から提案の中心となっていた「ウナー」と呼ばれるアトリウム的な中庭空間は、首里城の「御庭」に倣ったもので、人々が集まり、行き交う場としてとても活気があり親しみの持てるものとなっています。このウナーに面して置かれたリハーサル室でもある多目的なホールスペースは、表通り側にも開放することができ、この中庭に開放性を与えています。また、ここから見上げる上階の練習室は、二重ガラスを巧みにデザインして、吹き抜け側を切り下げて練習室内部のアクティビティを伺わせるものとなっており、練習室内部からもウナーを開放的に見下ろせるものとなっていてとても好感が持てました。
大ホール内部は明るい沖縄の海中を思わせる色彩と、バルコニー部の手すりの割肌タイルが醸し出す珊瑚礁のような質感が効果的で、南国を感じさせます。これに対して小ホールは高貴な色のイメージが首里城を連想させ、それぞれに固有の雰囲気を楽しませてくれます。
内外に造られたさまざまな広場的空間も、様々な出し物やイベントに活用されているようで、ホールの賑わいが周辺の街角にも溢れ出す様子が想像できます。全館があたかも大きな沖縄の「アシャギ」を思わせる、人々を迎え入れる懐の豊かな空間と見受けられます。
選考委員 古谷誠章