AACA賞2022 優秀賞|那覇文化芸術劇場なはーと
AACA賞2022 優秀賞
那覇文化芸術劇場なはーと
「なはーと」は那覇市のみならず、沖縄を牽引する舞台芸術創造拠点であると共に、市民の日常的な集いや交流の場を生み出すことを目的とした。
外観は、建物全体を織物のような皮膜で包むことで、住居と商業施設が混在する中心市街地の中で巨大な劇場施設を周囲のスケールと調和させた上で、新たな那覇の
顔となることを目指した。また施設は全方向に開き地域との繋がりを持たせると共に、沖縄・那覇地域独自の要素を取り入れた空間としている。
広場としての「ウナー(御庭)」を中心に、「スージグワー(路地)」のような通り抜け通路を設けて、賑わいと回遊性を高めた。
ウナーは3 層吹抜けで、練習室や劇場のホワイエが立体的に表れ、活動の賑わいに包まれる。
外観の皮膜は「首里織(花倉織)」の構成を再現することで、日差しや視線を和らげ、この場所ならではの景観をつくると共に、「アマハジ(雨端)」としての軒下空間を生み出し、人々を優しく迎え入れる。
プロポーザルの段階から提案の中心となっていた「ウナー」と呼ばれるアトリウム的な中庭空間は、首里城の「御庭」に倣ったもので、人々が集まり、行き交う場としてとても活気があり親しみの持てるものとなっています。このウナーに面して置かれたリハーサル室でもある多目的なホールスペースは、表通り側にも開放することができ、この中庭に開放性を与えています。また、ここから見上げる上階の練習室は、二重ガラスを巧みにデザインして、吹き抜け側を切り下げて練習室内部のアクティビティを伺わせるものとなっており、練習室内部からもウナーを開放的に見下ろせるものとなっていてとても好感が持てました。
大ホール内部は明るい沖縄の海中を思わせる色彩と、バルコニー部の手すりの割肌タイルが醸し出す珊瑚礁のような質感が効果的で、南国を感じさせます。これに対して小ホールは高貴な色のイメージが首里城を連想させ、それぞれに固有の雰囲気を楽しませてくれます。
内外に造られたさまざまな広場的空間も、様々な出し物やイベントに活用されているようで、ホールの賑わいが周辺の街角にも溢れ出す様子が想像できます。全館があたかも大きな沖縄の「アシャギ」を思わせる、人々を迎え入れる懐の豊かな空間と見受けられます。