AACA賞2022 優秀賞|yodge
AACA賞2022 優秀賞
yodge
風景と地域の継承
福島県玉川村、その中心部から最も離れた自然豊かな四辻地区にある。
2006 年に閉校となった旧四辻分校は背後に斜面が迫っており、単純な施設保存を村は考えていたが、我々が検討に加わり、村全体の活性化の構想・計画づくりを行い、地域活性化の拠点となるべく、複数の安全対策によって用途変更を可能とした。
携わった4 年間で多くの卒業生や地域の方と話す機会を持ち、そこでの意見を基に、壁・床板等は丁寧に剥がして保管し、耐震補強・断熱工事後に再利用することで、居住性、機能性を向上しつつ、人々の記憶に強く残る校庭からの風景を継承している。
東日本大震災の影響で減築された部分まで増築し、往時の外観を取り戻すとともに、屋根上テラスの塔屋は、棟を越えない高さに抑えた。
観光客だけでなく、地域の方々が今まで通り気兼ねなく立ち寄れる場であり続けること、いつも人々が居る場であることが、建物を生かし続けると考えた。
「yodge」という聞き慣れないタイトルの由来は?「yourlodging」「/あなたの泊まる宿」が短くなって「yodge」になったというのが私の解釈。「四辻地区」の村人たちはこのレストラン/共同施設は「四辻の離れ」で、「yotsuji」を短く「yodge」と呼んでいると聞いた。施設の案内は日本語と英語のバイリンガルが徹底している。村役場はすでに欧米、東アジアからの旅行者の案内を前提にしているからだ。
懐かしい思い出豊かな木造平屋/切り妻校舎の妻側がアプローチに選ばれ、壁を取り外した大ガラス面からは教室の天井材を取り外した屋根組みが露われ、この施設の爽やかさ、透明感を演出。教室の間仕切を移動して片廊下を2倍半に広げ「四辻ギャラリー」と命名。一方長手の正面校庭を優しい堤/土手が弧を描いて囲み、堤の上にはテーブル/ベンチとして可能な平板の木が巡らされ、多様な活用が期待できるランドスケープである。