AACA賞2023 芦原義信賞(新人賞)|Node Kanazawa
AACA賞2023 芦原義信賞(新人賞)
Node Kanazawa
AACA賞を主催される日本建築美術工芸協会は建築家、美術家、工芸家をはじめ関係する様々な分野の個人や団体が連携協力し、芸術性豊かな環境と美しい景観の創造を目的として、文化向上に寄与する事を願い設立された団体です。
私は陶芸創作と建築設計を生業にしており、様々な分野の境界を解すことで従来の価値観を更新させる取り組みをしております。
そのような観点から、応募作品「NodeKanazawa」は企業新社屋でありながら、アートギャラリーやカフェ等を内包し、産学協同や様々なアーテイストとの協働で立ち上がったプロジェクトですのでAACA賞の主旨に相応しいと考えております。
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敷地は金沢市の中心から少し離れた、北陸の物流の中継基地である金沢問屋センターの入り口に面し、中心の並木道の始まりの部分に位置している。並木道を引き込むように、敷地中央にクロスするNode「緑のミチ」が設けられ、そこには気持ちの良い自然の風が通り抜け、柔らかな日陰を作り出している。
南北2つに分割されたボリュームは、南側が少し低くすることで、一日の太陽の動きに沿って刻々と変化する気持ちの良い木陰を提供している。そしてこの緑の路地空間に面する1階のシャアゾーンのギャラリー、カフェ、オフィスに心地よい居場所を提供している。このNodeの緑道はパブリックに開放された「抜け道」になっていて、時折屈折したガラス越しに通り過ぎる人々の動きが、カフェやギャラリーにいる人々に心地よいリズムをもたらしている。
外観の構成は、武家屋敷の土塀や現代の機能的な倉庫を意識し、スケールアウトした土壁、倉庫の大きな庇の様な4mのキャンティレバー、渡り廊下は歴史的な問屋町を構成する建築の要素からインスパイヤーされ、地域の風景に馴染み、歴史や記憶の現代への継承を促しているが、在来木造工法の必要要素としても機能している。
この計画は建築のあるべき創られ方への問いかけを持っていると言える。陶芸家でもある設計者は、陶芸の持つ「感情的」、「土着的」な無意識な土による歪な土の塊のような形態スタディでの検討と、最終的に「使われる建築」という現実化への設計意識を融合させたプロセスでこの計画を実現させている。建築本来が持つ芸術と工学の融合の原点にチャレンジした優れた試みであり、AACA賞芦原義信賞にまさに相応しい作品である。