AACA賞2023 優秀賞|八戸市美術館
AACA賞2023 優秀賞
八戸市美術館
八戸市美術館は、収蔵・展示を主役とした従来型の美術館像から、地域の文化に根ざしたプロジェクト・ラーニングプログラムを主体とした美術館像へのアップデートを目指している。
進行中の美術作品や創作活動など、多様な活動が共存し人々が互いに学び合える包容力のある空間が求められた。
そこで、誰もが利用でき偶然未知のものに出会える巨大な空間「ジャイアントルーム」と、プロジェクトをより深化させる諸機能に特化した「個室群」という2種類の空間を併置した。
「ジャイアントルーム」はエントランスであり、休憩、制作や展示も可能なスペースで、一方、「個室群」はより具体的に、特定の利用者による制作や展示が可能な個別の仕様になっている。
特定の活動に特化しているからこそ返ってそれを裏切ったり、部屋をさまざまに組み合わせたり、といったことができる。
抽象的な空間から何かが生まれるのではなく、とても具体的な場が人々を触発していくのだ。
所在地:青森県八戸市番町
主要用途:美術館
敷地面積:6,732.14㎡ 延床面積:4,844.95㎡
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ジャイアントルーム:工ントランスや展示、レクチャー、イベント、休憩などの活動が共存できる巨大な空間
写真撮影 morinakayasuaki
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ホワイトキューブ:天井に回路十器具調光の照明と仮設壁を固定可能で、さまざまな要求に対応できる展示室
写真撮影 新建築社
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外観:周囲への圧迫感と日影をおさえる凸型ポリュームとキールトラスによるハイサイドライト
写真撮影 阿野太一
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まず館内に入ると「ジャイアントルーム」に直結する。天井高17メートル 広さ800平方メートル。ここはいろんなプロジェクトの考えられる空間だ。イベントごとに動く棚とカーテンで空間をしきり、ミーティングや、ワークショップ等行われている。建物の奥にある「ホワイトキューブ」は企画展示会場と「コレクションラボ」が続く。さらに市民の発表活動を支える2つのギャラリーと大小のアトリエ、様々な小部屋が続き、部屋から部屋へ繋がっていて、いわば顔のない不思議な建物であった。これは落ち着かないが、面白い。
話は横道に逸れるが、ここ十数年日本の文化政策にいろいろな変化が起きている。美術館といえば、文部科学省、文化庁が管轄と思うが、たとえば国土交通省の「社会資本整備事業」が文化美術施設に交付金を出している。2007年(平成16年)国立国際美術館を皮切りに、札幌市、秋田県秋田市、徳島県と、全国に広がっているこの八戸市もその機会を生かして実現した。 市内にはユニークな取り組みとして、まちなか広場「マチニワ」や、「八戸 ブックセンター」がある。それらと共に市民の方々に親しまれ、愛され、今後の活動に期待したいと思う。今回は、審査会全員一致でAACA賞優秀賞を決定いたしました。