一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2023 奨励賞清水建設北陸支店新社屋
AACA賞2023 奨励賞
清水建設北陸支店新社屋

石川県金沢市における清水建設北陸支店の社屋建て替えである。
敷地周辺には藩政時代の面影を感じる美しい街並みが残る。
計画にあたっては、この場所で100年営んできた歴史・周辺環境とのつながりを大切にしながら、国内最高クラスの環境性能をもつオフィスを目指した。
県産の能登ヒバによる木質化、日射量の季節変動が大きい北陸でも年単位でのピークシフトが可能な水素エネルギー利用システムの導入など、この場所固有のかたちで具現化した技術を丁寧に統合し、その取組を広く発信する媒体としての建築を実現した。

作 者:清水建設株式会社 プロジェクト設計部2部 岡崎真也
清水建設株式会社 関西支店 副支店長 堀部孝一

所在地:石川県金沢市玉川町

主要用途:事務所

敷地面積:3,255.01㎡ 延床面積:4,224.46㎡

低層の社屋は周辺の密度感と調和し深い陰影が伝統的街並みと呼応する
写真撮影 北嶋俊治
現代に相応しいかたちで具現化した木虫籠ルーバーが繊細な陰影をつくる
写真撮影 新建築社写真部
2・3階オフィスには能登ヒバの格天井から採り入れた自然光が柔らかく広がる
写真撮影 髙橋菜生
選評
 この計画は北陸に100年の歴史を持つ支社の新社屋である。シンメトリーで幾何学的外観の建築は、正面に広場を設け、既存の神社や緑を残し、藩政時代の面影が残る風格ある街並みの雰囲気を継承している。
 この建築は「超環境型オフィス」として最先端の技術力で、働く人のための気持ちの良い空間の実現を目指している。構造は外観を構成するRCの壁柱とフラットスラブ、そして内部は、キャンティレバーとランダムな鋼製柱で変化のある吹き抜けの大空間に心地良い居場所を作り出している。
 大空間は「木鋼ハイブリッド」という梁成1000mmのビルトHの鋼製梁を1時間の耐火被覆の能登ヒバで覆った格天井で覆われる。これは空間全体を全館避難安全検証により大臣認定を受けたことで内装制限がなく、薬剤の不燃処理も不要になったことで、人間の五感を開放する「能登ヒバの風合いや香りのする大空間」が実現していることは素晴らしい。格子天井の上部トップライトから降り注ぐ光と、南面のクライマー式ブラインドと庇の組み合わせ、そして西面の「木虫籠」から引用した縦ルーバーにより多様にコントロールさられた床から天井までのLow-E複層ガラスの大開口により、太陽光の変化が室内に豊かに取り込まれている。トップライトの斜め屋根を利用した太陽光発電は冬期の不安定な天候を考慮した「Hydro Q-BIC」の水素によるエネルギーロスのないシステムとなっている。 大型ガラス下部の換気、「躯体蓄熱型放射空調」、働く人のための照度と色温度を考えた照明システム。「ゼロシュリンク(無収縮)」コンクリートの床など、緻密な美術工芸品のような技術の集大成であるが、なにより働く人にとって心地よい場所を作ることを最終目的としている建築でありAACA賞奨励賞に相応しい優れた作品である。
選考委員 堀越英嗣