AACA賞2023 美術工芸賞|末富 青久 カフェスタンド
AACA賞2023 美術工芸賞
末富 青久 カフェスタンド
裏千家から絶大な信頼を寄せられ主要なお茶席のお菓子を一手に手掛けている京都の老舗和菓子屋「末富」が手掛ける新ブランド「末富青久」のティクアウト専門のカフェスタンド。
敷地は四条と五条の間の烏丸通り沿いの交差点。木造ニ階建てのさらに下屋部分でした。奥行はたったの1m。
厨房と休憩所を道路に並行配置したプランは直ぐに決まりました。
我々は景観に配慮して外壁に銅箔テープを貼付け醤油と薬剤を使い分け銅を酸化させました。
外観を古都に相応しい佇まいとしつつ「末富ブルー」と呼ばれ70年以上も親しまれている美しい水色を銅の錆ある緑青で表現しました。
AACA賞は建築のみならず、建築の各専門家の方々をはじめ彫刻・照明・豕具・ランドスケープまで幅広い領域の審査員の方々が名を連ねてらっしゃいます。
今回、応募した物件は奥行1mほどの本当に小さな物件です。
しかし多方面の領域にも応えられる様な工夫を散りばめた渾身の作です。
特に銅の酸化をコントロールした外壁はぜひ直接ご説明したいと思い、現地審査のあるこの賞の応募を決めました。
所在地:京都府京都市下京区
松原通室町東入玉津島町
主要用途:物販店
敷地面積:10.17㎡ 延床面積:10.17㎡
カフェスタンドの先には末富本店があり、このささやかな店が本店へのゲートウェイの役割も担っている。そこで、大通りに面した幅1mの壁面を茶色から水色に徐々に変化させて存在感を強く印象づけ、人々の視線をカフェスタンドの奥にある末富本店に誘導するようにしている。前面道路に並行して細長く配置された厨房と休憩スペースの外観は、古都京都の老舗和菓子屋にふさわしい茶色とし、休憩スペースは「末富」のコーポレートカラーである水色で表現した。自然素材と見なされた幅3センチ足らずの銅箔テープを、隙間なくパネルに貼り付けた後、銅箔の上に醤油を塗って茶色に、塩化アンモニウム水溶液を塗って緑青色に変化させ、京都の景観条例を満たして茶色と鮮やかな水色を得た。全て手作業で貼り合わされたテープのライン、パネルごとにできたわずかな色むらが、工業製品にはない豊かな表情を作り出している。
休憩スペースのベンチの下にひっそりと造られたミニュチュア枯山水庭園は、狭い休憩スペースを広く感じさせる役目を果たすと同時に、老舗の矜持を示している。閉店時間になるとここには網状の幕が下され、天井から床に移されたランプが水色の休憩スペースを終夜照らす。
あん(甘い)×生ハム(しょっぱい)を組み合わせた「生ハムとチーズのあんカスクート」「あん入りカフェオレ」を食べて、伝統を守りながら今の時代に沿ったものを作って若い人に和菓子の奥深さを知ってもらいたいと願う施主の思いをかみしめた。