一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2023 特別賞熱田神宮 剣の宝庫草薙館くさなぎ広場
AACA賞2023 特別賞
熱田神宮 剣の宝庫草薙館くさなぎ広場

幻古代作刀工房を想う。
皇位継承の三種の神器「草薙神剣」を祀る熱田神宮には古より刀剣奉納が続き、刀剣収蔵日本一の450ロ。
毎月宝刀10口づつ、神苑に抱かれ拝観させ「草薙神剣の心と刀剣鍛造を実感できる類なき建築を」との熱田神宮の崇高な依頼。
設計当初より太郎太刀武者像実物大制作とか、提案空間と人の様を多数水彩画で示し、熱田神宮の想いを確認。
耐火無窓の箱の内で、と国宝等文化財を護る国の展示指針とも調整。
外部環境から遮断され、硝子ケース(独自270度で房形外照式)内に自ら光を放つかの宝刀。
なのに対峙する人は、社の霊気と風の梵も感じる。
5箇所の北向鉛直高窓の外の杜の巨樹を、万華鏡効果で鏡天井一杯に杜の姿を増幅。
館周囲の南神池水面も拡張し、東海道一の歴史「熱田湊」をテーマに、渡し船オブジェと苔生し屋根の待合東屋群、湖岸できしめん楽しむ熱田家族ベンチも新案。
全て世代、早朝から夜まで、賑わいある「くさなぎ広場」

作 者:上田徹/玄綜合設計

所在地:愛知県名古屋市熱田区神宮

主要用途:神社

敷地面積:187,707.00㎡ 延床面積:1,053.40㎡

作品紹介ビデオを観る
熱田大神の杜と海の神が出逢う処がかつての熱田湊。今それを形で見せるくさなぎ広場
写真撮影 工スエス名古屋支店
広場に面した古代多々羅製鉄作刀工房を想う。唐破風玄関と右の石組みは作刀剣鍛錬場
写真撮影 工スエス名古屋支店
新三面硝子ケースで宝刀公開。鏡効果で外環境遮断室内に、人は神苑の杜の内気を感ず
写真撮影 工スエス名古屋支店
選評
 厳かで美しい刀や太刀を学ぶための、新しい可能性を体感した空間であった。
 愛知県名古屋市の熱田神宮は、熱田大明神を祀神とし1900年の歴史を背景に人々の熱い信仰を古くから集めてきた。今回の対象は、西門近くに配置された「剣の宝庫 草薙館」(以下「草薙館」という。)と前庭「くさなぎ広場」。江戸期には伊勢湾に接し湊として栄えていたことにちなみ、船の抽象オブジェを中核にした池と休憩所が計画された。その賑わいから「草薙館」に一歩足を踏み入れると、天井へと延びる“ぐねり”とした印象の構造体がつくる、深い森林のような静寂な空間が広がり、弧を描く壁際から突き出した展示ケースに、刀剣が凛として並んでいた。この熱田神宮には、三種の神器の一つでもある「草薙の剣」が祀られ、奉納された450口の刀剣が宝物館に収蔵されている。「草薙館」はその刀剣を展示し、さらに日本古来のたたら製鉄から製造についても取り上げ、刀に関する貴重な体験と学習のできる機能をも備えた施設として計画された。大きく見上げる先には天窓が4つ。外光とともに神宮の杜が、鏡面仕上げの天井に映し出され、饒舌な仕様とは真逆に、緑に包まれたような不思議な安堵感を覚えた。
 特筆されるべきは、刀剣の展示である。通常、刀は、ケース内正面から対峙しての鑑賞となるのだが、「草薙館」では刀の3方向からの鑑賞を可能とすべく、特別のケースが設計された。刀の切先(きっさき)を視ることが許されるそのケースは、壁から斜めにせり出し、一口ごとに集中して観賞することができる。展示替えも、学芸員が安全を確保しながらスムーズに行えるような開閉の工夫が凝らされている。そして、刀を照らす照明が、しめ縄型のカバーに収められ器具が目に入らないようになっており、細かい調整により一口ごとを最適に照らせる照明計画も評価したい。
 こうした独特の展示空間は、設計にあたった上田徹氏が、これまで長年にわたり熱田神宮の配置改造を伴う設計に関わり、深い信頼関係を結んでいる中で成就できた建築空間といえよう。刀剣を展示する施設とその環境において、見るだけではなく体験を重視したあらたな刀剣の学び舎としての機能にも期待をしたい。
選考委員 降旗千賀子