一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2024 AACA賞ポーラ青山ビルディング土浦亀城邸 復原・移築
AACA賞2024 AACA賞
ポーラ青山ビルディング土浦亀城邸
復原・移築

神宮外苑、赤坂御用地、外苑墓地のグリーンゾーンに囲まれた南青山のテナントビルである。 近年の大量オフィス供給と、コロナ禍以降の需要変化を鑑み、今後のオフィス空間には「個人で集中する場」と「人が集まりコミュニケーションを図る場」の確保と独自性が強く求められる。 ポーラ・オルビスグループの掲げる企業ビジョンに応え、建築とアートの共生により、ビルで働く人、青山という街に対して刺激と安らぎを与えることができる。
青山通側外観の「街の床間」に立体アートが、1階ロビー、公開空地にもアートが置かれ、14階屋上テラスに長さ26mのストリートアートが設置された。 敷地南側には、東京都指定有形文化財『土浦亀城邸』が復原・移築され、昭和初期に近代建築の住宅が誕生した時の"新鮮な"感覚が周辺環境に広がった。 ここで生活する人々がアートや文化財によって日常の変化の機微を意識するようになり、大きな刺激剤となることを願っている。

作 者: 建築 設計・監理 有限会社安田アトリエ 安田幸一 北田明裕 鈴木智子
建築 設計・監理 株式会社久米設計  安東直 星吉秀 鎌田裕樹 宮﨑将行
アート監修 株式会社TAKプロパティ 村井久美

所在地:東京都港区南青山

主要用途:複合施設(事務所、集会場、展示場、保育所、飲食店、駐車場)

敷地面積:2465.81㎡ 建築面積:1090.76㎡ 延床面積:17104.44㎡

作品紹介ビデオを観る
建物外観。青山通り側の外観を5層分凹ませた「街の床間」を設け、街への貢献を企てた。
写真撮影 Tomoyuki Kusunose
土浦亀城邸外観。目黒区上大崎から復原・移築された昭和を代表するモダニズム住宅。
写真撮影 Tomoyuki Kusunose
5階アート鑑賞スペース。立体アートを支えると同時に、光学ガラス越しに都市を見渡せる空間。
写真撮影 Taysuya Noaki
選評
 私たちは神宮外苑近くの青山通りにある『ポーラ青山ビルディング』を訪れた。通りから眺めると、現代的で勇壮な姿のビルが目を引く。よく見ると、4階部分から何かが突き出ている。それは人の耳のようにも、植物の新芽のようにも見える。説明によれば、これは3億年前の古代植物でシダ科の「シギラリア」を主題に着想を得て、ステンレスの彫刻として制作されたものだ。作家はさまざまな事象から創作のインスピレーションを得ているのだろう。1階のエントランスには、オーソドックスで力強い具象のブロンズ像が数点配置されていた。さらに、14階の屋上テラスは、東京の都市上空に向けてパースペクティブが効いたモノトーンの壁面も見ることができた。この建築とアートプロジェクトは、6年の歳月をかけて生み出されたものであり、革新的だと感じた。
 さて、このポーラ青山ビルのもう一つの見どころは、土浦亀城邸の復元・移築が実現したことだろう。土浦亀城邸(第二)は、日本の戦前のモダニズム建築の先駆けとなる、魅力的な都市型住宅を生み出した。土浦亀城は1897年(明治30年)水戸市に生まれ、1918年東京帝国大学工学部建築学科に入学、寄宿先で遠藤新に会い、その紹介で当時来日中のフランク・ロイド・ライトのドラフトマンとして設計を手伝った。その後ライトに請われ、アメリカへ信子夫人とともに渡米し3年間を過ごし1926年帰国する。交流のあった画家達の中に、岡田謙三がいる。9歳下の長谷川三郎など画家との交流を深めた事も大きな意味を持つ。
 1930年代の日本が夢と希望の持てた頃の私達にとって、貴重な土浦亀城邸の移築と公開が実現した。ポーラ青山ビルディングは単なる建築物としてだけではなく、土浦亀城邸と、現代アートが見事に融合した作品である。東京の都市景観を新たに魅力を加えている。今回のAACA賞は審査員全員一致で決定しました。
選考委員 米林雄一