一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2024 優秀賞MUFG PARK / LIBRARY
AACA賞2024 優秀賞
MUFG PARK / LIBRARY

MUFGが西東京市に70年間保有する行員用運動場を、民間整備のMUFG PARKとして一般開放する計画。開放と合わせて、豊かな木々が残る敷地南側に地域コミュニティの場となるライブラリを建設した。
■自然継承
樹木調査に基づき木々や根を傷めない建物・園路・インフラ配置とし、ほぼ全樹木を保全した。雨水は全て敷地内に浸透させて地下水を涵養し自然育成に努めた。
■コミュニティライブラリ
木々に囲まれた芝生広場に面するライブラリは、異なる目的の来訪者が気軽に立ち寄り交流が生み出されるよう深い軒と縁側空間をつくる。園路を歩く人がその延長で館内を通り抜けられるよう両端にエントランスを計画。
蔵書は地域からの寄贈で構成され、「寄贈本=想いの積み重なり」を可視化すべ、幅40mの壁面本棚を設えた。構造柱とサッシ方立の兼用、壁面本棚への照明・空調開口の組込により、視覚的ノイズを減らし、自然を身近に感じられる空間構成としている。

作 者: 株式会社三菱地所設計
谷澤淳一 代表取締役社長
大森晃 建築設計四部 シニアアーキテクト
橋祐太 東北支店 アーキテクト
長谷川結以 建築設計三部
Lumimedia lab株式会社
岩井達弥 代表取締役
石井孝宜 取締役

所在地:東京都西東京市柳沢

主要用途:図書館、公園

敷地面積:62,524.48㎡(PARK全体)11,040.55㎡(ライブラリ敷地)
建築面積:645.70㎡ 延床面積:436.10㎡

2枚の水平面(大屋根、縁側テラス)と垂直面(壁面書架)の構成を透明な開口部で可視化する
芝生広場と縁側テラスに向け緩やかに傾斜する大屋根により、室内外の視覚的な一体感を生み出す
「寄贈本の積み重ね=コミュニティの成長」を可視化する森の本棚の照明で空間全体が浮かび上がる
選評
 温かな光が降り注ぐ芝生では、子供から大人までが思い思いの楽しみ方をしていた。ここは西東京市、JR三鷹駅から少し離れたところにある、MUFG(三菱UFGファイナンシャルグループ)が、70年間保有していた行員用運動場を含む広大なエリアを、一般に開放し、地域コミュニティ活性化に役立つことを目指して整備されたMUFGPARK。武蔵野大地の面影を色濃く残す木々の茂みが一角に残る。大きな芝生広場とその北側にある運動場の境目に、軽快なスカイラインを持つ低層の図書館が建てられた。これにより、元からある芝生広場は、大きなガラス張りの建物の前庭として新たな命が吹き込まれ、利用する人々との一体的な空気感を作り、新たな景色に生まれ変わった。
 建物内部は、ガラス面から8m奥行の北側一面に耐震壁の機能を持つ「壁面書架」が、緩やかに40mの弧を描く。内部の書棚は低く広く開放的な空間だ。この建物を特徴づけているのが、北側から南側に緩やかに片側傾斜した大屋根で、軒先を薄く仕上げた深い庇を持ち、下に拡がる外部空間がコミュニティエリアとなる縁側のようなテラスに仕立てられ、その空間をだれもが楽しんでいるのが印象的であった。屋根と北側の壁面書架との境目には、スリットの開口部があり、大きな屋根に軽快さを生み出すことに成功、そこからの明るさも全体の空気を和らげている。
 さらにこの建物では、照明の演出がきめ細かく計画されているところに注目した。天井には一切照明を埋め込まないで、もっぱら光りは南側の大きなガラス面から差し込むのであるが、屋根の軒が深いので、光が縁側テラスにバウンドして内部に柔らかく入ってくる。書棚の照明は棚板にライン上に埋め込まれ、本を柔らかく照らす。必要なところに、必要な明るさを置くことに徹した照明が、施設全体と外との一体感を重視した光の演出となり、評価のポイントでもあった。
 図書館は、全国に1000件を超える広がりを持つ「まちライブラリー」が運営する。蔵書は一般からの寄贈本で成り立ち、配架のカテゴリーもユニークで、規則もゆるく使用の自由度が大きい。その独自の手法は人々の共感を呼んでいる。多くの人々が、本とともに時間の経過を楽しめるいわばコミュにキティライブラリーとして機能していて、さまざまなワークショップも開かれるなど可能性を秘めている。本を媒介にしたクツロギの空間。公立の図書館とは違う役目をもったライブラリーの今後の展開にも注目してみたい。
選考委員 降旗千賀子