一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2024 奨励賞Ginza Genuine Glass Garment
AACA賞2024 奨励賞
Ginza Genuine Glass Garment

究極のガラスファサード
世界有数の商業都市である銀座にハイブランドのテナント誘致を前提とした商業施設の計画である。周辺はハイブランドのショーウィンドーが路面に並び街並みに賑わいと活気をもたらしている。建物の流動性を鑑みファサードでブランドイメージをつくりこむことはせず4層のファサードを究極に透明とすることで可変するテナントインテリアが表出しブランドイメージをシーズンごとにダイレクトに街に発信できると考えた。
究極の透明度を実現するため事業性を最大限確保しつつ様々な技術的検証を進め、建物全体がショーウィンドーとして賑わいを都市に与えつつ、見る位置・時間によっては建物の姿が消えるかのように銀座の街並みや空が写しこまれ都市の一部となればと計画しました。
結果ガラスという素材を美術・工芸としての解像度のまま建築のスケールにまで昇華させ建築とようやく融合できたのではないかと思います。

作 者:櫻井建人 ETHNOS

所在地:東京都中央区銀座

主要用途:販店舗、飲食店舗

敷地面積:644.05㎡ 建築面積:544.12㎡ 延床面積:2114.53㎡

建物全体がショーケースとして街並みに開く
交詢社通りとソニー通りの交差点にあるテナントビル
時間や角度によって銀座の街並みを写し込む金物が一切ないガラスファサード
選評
 敷地は銀座並木通りと交詢社通り、ソニー通りの三方に面した、建築家、デザイナーによるハイレベルな建築を纏った世界のハイブランドが並ぶ街並みにある。近年の高級志向のインバウンド向けのブランドエリアであることから、まだ新しい建築であっても、その意匠がブランドとの整合性と合わず、大規模な改修や建て替えになることが多い。それは銀座の街並みの発展的変化だが、スクラップアンドビルドは、ブランド会社にとってもSDGs的には好ましくない。この計画はテナントビルであるが、透明なガラスボックスで包まれているため、街から見える外観はテナントがそれぞれのテーマでガラスの内側で、内装として外観を作ることができる。それは実際には外部でないことから防水や、耐久性の高い外装部材、すなわち建設、解体時に環境負荷の高い材料や施工法を用いずに、ブランドの表現したい世界観をそのまま街並みに表出することができる。
 ヨーロッパの古くからの都市の商店は趣向を凝らしたショーケースが美術館の展示のように街並みに表出することで活気を与えている。この計画は建築全体が透明のショーケースであることに徹していることが、画期的であるが、実現するための様々な工夫と努力が、ガラスのディテールに凝縮されている。建築のトップの笠木以外はガラスだけで建築全体を覆っている。ガラスを安全上から止める金属ファスナーもガラス表面から外には表していない。徹底したディテールが「存在感を感じさせない透明なガラスの箱」を実現している。技術的には高透過の合わせガラスの間に金属のファスナーを差し込むことで、表面には金属は現れない上下二辺支持である。
 実際に尋ねると、銀座の街並みにハイブランドの古典的イメージがそのまま表出していることに驚かされる。しかし少し歩くと、今度はガラスの反射性がその姿を消し去るという、イリュージョンのようなファサードがこの建築に魅力を与えている。都市の商業テナントビルの環境コンシャスな持続性を持つ優れた発想であり、AACA賞奨励賞にふさわしい作品である。
選考委員 堀越英嗣