一般社団法人 日本建築美術工芸協会

一般社団法人 日本建築美術工芸協会

sitemap
AACA賞
AACA賞2024 特別賞虎ノ門ヒルズステーションタワー
AACA賞2024 特別賞
虎ノ門ヒルズステーションタワー

このプロジェクトは、虎ノ門ヒルズを国際的なビジネス拠点とし、街と交通、体験を結びつける結節点として位置づけられている。
周辺エリアとの連携を強化し「つなげること」をテーマに、タワー同士をネットワーク化してエリア全体の活性化を図っている。
特に、東京初となる自然光が差し込む地下鉄直結の「ステーション・アトリウム」と、多層に繋がる立体的な公共空間が特徴である。
タワーの低層部には公園のようなデッキが設けられ、都市の中で人々が集い活動できるスペースが提供されている。
屋上には公共性の高い施設やインフィニティ・プールを備えたガーデンテラスがあり、新しい都市体験を創出している。
効率性だけでなく、交流しやすいダイナミックな環境を実現することで、このプロジェクトは都市と一体化した新しい空間を生み出し、未来を見据えた都市デザインに貢献している。

作 者:森ビル株式会社一級建築士事務所
新井章邦 常務執行役員 設計部統括部長
田尾健二朗 特任執行役員 設計部統括部長補佐
荻野隆博 専門課長
雨田祥吾 チームリーダー
森村祐子 チームリーダー
田尾若菜 チームリーダー
株式会社久米設計
安東直 上級担当役員 設計本部プリンシパル
鈴木章浩 設計本部第3設計室 室長 早瀬幸彦 設計本部第3設計室 部長
横田順 開発マネジメント本部 ソーシャルデザイン室 部長

所在地:東京都港区虎ノ門

主要用途:複合施設(オフィス、商業、ホテル、ビジネス発信拠点)

敷地面積:9,905.59㎡ 建築面積:8,059.23㎡ 延床面積:236.638.83㎡

台形と逆台形のアシンメトリーなボリュームが形成するダイナミックなスカイライン
桜田通りを跨ぐT-デッキから続く歩行者動線がタワー中央を貫き、広域ネットワークを形成する
自然光が降り注ぎ、人、車、電車の動きが同時に見えるステーションアトリウム
選評
 敷地は新しくできた虎ノ門ヒルズ駅に直結する虎ノ門ヒルズの開発計画の一つであり、それまでの開発や、霞ヶ関につながる結節点を担う場所である。この「街を繋げる」という役割から、低層部の空間にダイナミックな特徴が現れている。高層棟のセンターコアを7階のスカイロビーでスプリットコアとして左右に分割することで、「アクティビティバンド」と名付けた人のための動線がタワーの真ん中を貫いて、街をつなげている。このバンドに立体的に絡み合うように新駅である虎ノ門ヒルズ駅のホームの地下鉄のアクティビティ、人、そして車の動きが見えるという都市のダイナミクスを感じる。特に優れた点は、建築設計者とデザイン統括のアーキテクト、都市・土木スケールのデザイナー、インテリアデザイナー等が全体のバランスを保って共同していることである。敷地の中だけではなく、既存の虎ノ門ヒルズの広場から敷地の間にある桜田通りに架かる緑道のような歩道橋「T-デッキ」が環境デザイナーと土木技術によって、歩行面だけでなく地上面からの見上げとタワー内部の天井とのデザインの整合を図った合理的で美しい構造がバンドの連続性を高めており、 それぞれの担当分野が個性を主張するあまりに分離するということなく、尊重し合いながらマージナルに検討している共同体制に感銘を受ける。そのことで計画全体が新しい都心の活気ある複合の美と言えるデザインを実現していると考える。
 それは高層棟のデザインからも窺える。安易な形態操作だけの意匠でデザインするのではなく、低層のバンドからタワー中心部を上部まで連続するアクティビティとして感じられるようにタワーを二つの異なった形態のボリュームで構成し、そこで生まれる3次元的にねじれたダイナミックな表情が頂部の「TOKYO NODE」という情報発信拠点につなげている。単なる建築の象徴性だけでなく、変形ボリューム骨格全体のデザインが、都市のスケールでアクティビティそのものを表現していると言える。
インテリア、建築、都市、土木が分野を横断する全体のデザインとして統合された、AACA賞特別賞にふさわしい優れた作品である。
選考委員 堀越英嗣