一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2024 審査総評
 今年も昨年に引き続き、審査員が揃ってのパネル選考に始まり、人数を制限しない現地審査、さらに応募者の皆さんにも直接来場していただいての完全対面での最終公開審査や意見交換会まで、予定通りに審査を行うことができました。応募者各位をはじめ、準備に当たられた関係者にこの場を借りて厚くお礼を申し上げます。
 今年は応募総数がさらに増え、建築の規模、地域、内容などいずれ劣らぬ力作揃いの作品が集まりました。その中から現地審査に進んだ18作品のうち、最後まで最優秀を競った2作品は全く異なった性格の作品であり、まさしく甲乙つけ難く審査は難航しました。結果として僅差ではありましたが、一点をAACA賞にふさわしいものとして選出することができたと思います。

 接戦を制してAACA賞に選出されたのは、青山通りに建つ建築とアートが結びつき、敷地内に同じく芸術的な価値を有する土浦亀城自邸を復原・移築した《ポーラ青山ビルディング》で、館内の随所に配された先進的なアート作品が独特の存在感を放ち、まさにAACA賞の目指す美術工芸と建築が渾然一体となった素晴らしい建築です。
 最後まで拮抗した優秀賞の《ROOFLAG》はCLT架構をダイナミックに仕掛けて一挙に空間を創り出すエネルギッシュな力作で、写真では推し量ることのできないスケール感が見る者を圧倒します。これに対し上野谷中墓地の花屋の改修である優秀賞《花重リノベーション》は、一部の棟は江戸時代に遡る既存木造に対し、無垢の鉄材による増築架構がむしろ重みが緩衝されて、木造の軸組に不思議に調和する創造的な改修がなされたものです。さらにもう一つの優秀賞受賞作である《MUFG PARK / LIBRARY》は、緑豊かな都市のオープンスペースとして残された稀有な場所に、建つ伸びやかなライブラリー空間です。外部空間をそのまま内部空間に引き込むことに成功しており、弧を描く優美な造形が公園の空間にマッチしています。
 過去にAACA賞に関連する受賞経験のない新人に贈られる芦原義信賞には、美術品の国外流出を防ぐために私費を投じた藤田傳次郎のコレクションを展示する《藤田美術館》が選出されました。既存の蔵や庭園石材を可能な限り再生活用した努力作です。

 美術工芸賞には《ジンズホールディングス東京本社》が選ばれ、ギャラリーの中にオフィスがあるとも言うべき、従来のオフィスの概念を超える、社員の創造力を喚起する斬新な発想が高く評価されました。
 特別賞《虎ノ門ヒルズステーションタワー》は、都心の大規模再開発のプロジェクトだからこそできる、大胆な建築機能の再編と個性的なライティングアートの導入により、特徴的な建築内外の空間を創出した点が評価されました。

 また奨励賞に選ばれた《古平町複合施設 かなえーる》《十津川村災害対策本部拠点施設》《Ginza Genuine Glass Garment》《小諸蒸留所》は、どれも大変な力作であり芸術的な評価も高く、さらに入選となった各作品もいずれ劣らぬ佳作揃いで、とても力量のある作品群であったと思います。
選考委員長 古谷誠章