一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2019 審査総評
 昨年の公開審査に引き続き、今回も二次審査を応募者のプレゼンテーションによる公開審査として行い、発表された方々を始め、選考に当たられた審査員各位、進行を支えてくれた事務局各位のおかげで、無事に終了することができました。まずは皆様に感謝いたします。
 今年また格段に応募作品の質が向上し、現地審査対象作品、並びに最終選考には大いに苦しみました。作品の内容も大規模な大学図書館や講堂や大小の商業施設から、オフィス、個性的な住宅、既存建物の大胆な改修など、実にバラエティに富んだものでした。またAACA賞ならではの美術工芸と建築の融合の視点からは、両者が独立してあるというよりは、その境界が曖昧になり、建築にアートが自然に溶け込んだもの、または建物の一部が、建築の要素でありながら高度にアート化されたものなど、多様なものが見受けられました。
 そんな中で今年圧倒的な説得力を持ってAACA賞を獲得したのが《福祉型障がい児入所施設 まごころ学園》。「施設」でありながら「家」を彷彿とさせるブレークダウンされたスケール感と、子どもの生活環境にふさわしい細やかな空間の変化を内包する機知に富んだデザインで最終審査において審査員全員の支持を得ました。
芦原義信賞には環境性能を重視する独創的なクライアントの要請に、綿密な思考とものづくりへの果敢な挑戦で応えた《淡路島の家》が選ばれました。淡路瓦の技術を活かして、日射遮蔽や通風のための独特の外部シェルターを形づくる弓なりにカーブを描くユニークな「日除け瓦」を実現しています。
 これに続く優秀賞の3作品も、それぞれに特徴のあるもので、《早稲田大学37号館早稲田アリーナ》は同大学の旧記念会堂を建て替えたもので、大規模なアリーナを地下化して地上をランドスケープで覆うもの、《SYNEGIC Office》は本社屋をCLTによる大胆な木構造でつくるもの、《UTSUROI TSUCHIYA ANNEX》は古くからの情緒を保つ城崎温泉で、元の消防署をゲストハウスに改装する斬新な試みで、何れ劣らぬ力作ぞろいでした。
 奨励賞3作品は、《日本橋旧テーラー堀屋改修》が木造を補強する方杖状の部材を構造用の鋳鉄でつくって独特の雰囲気を出しており、《ACADEMIC-ARK@OTEMON GAKUIN UNIVERSITY》が新キャンパスでの学生の拠点となる図書館を大きな逆三角錐状の形でつくり、その外皮をステンレス・ダイキャストで製作した透ける金属スクリーンで覆ったもの、もう一つの《La・La・Grande GINZA》が小ぶりな店舗ながら、動線の集中するその外皮を緻密なサッシュワークで美しく構成しており、3作品のいずれもが建築の一部を美術工芸化したものと言えます。最後に昨年度に創設した美術工芸賞には、《i liv(アイリブ)》が選ばれました。銀座の中央通りに面するその正面全体を、ウェーブするガラスルーバーで造形したもので、そのイルミネーションとあわせて、建築そのものが美術工芸としてのアート作品に結晶しているとして、審査員の多くから指示を得て選ばれました。
 毎年のことながら今回もこのように充実した作品を数多く選ぶことができ、大変うれしく思います。

選考委員長 古谷 誠章