一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2020 優秀賞尼崎パーキングエリア
AACA賞2020 優秀賞
尼崎パーキングエリア

作 者:納谷建築設計事務所/納谷 学、 納谷 新

所在地:兵庫県尼崎市南城内地先

写真撮影 冨田英次
写真撮影 吉田誠
写真撮影 吉田誠
選評
 この施設は大阪と神戸を結ぶ阪神高速3剛神戸線の上り、大阪に向かう高架上にある。平成28年に阪神高速道路株式会社が主催しJIA近畿支部が運営主体で実施された設計コンペティションで選定された作品である。敷地は高速道路に沿って約400m、幅20mの細長いエリアに建設された約160mの細長い建物である。阪神高速3号神戸線は道路の両側にグレー色の防音のための背の高いフェンスが設置され、高速道路を走る車の中からは外部の景色が見えず、無機質な空間が連続している。尼崎パーキングエリアの標識が見えるあたりから、前方に緑の塊と木造らしき建物が見え、パーキングエリアがあることが認識され、気持ちが安らぐ。
 車から降り、パーキングエリア施設を見ると、駐車スペースの前面中央に繊細に仕上げられた60㎜ほどの小幅板の下見板張りの細長い壁面と、それに沿って設けられた木の無垢材のベンチ、白く塗装された深い軒庇が連続している。非常に細長いシンプルな建物であるが、スケール感がとても良く心地よい空間となっている。その連続した壁面に設けられた開口を入ると、男女のトイレと自動販売機コーナーが連続して配置されている。駐車スペースからの動線が短く、利用者にとってはうれしい設えである。
 トイレ内部は男女ともに大きなガラススクリーン越しに、道路フェンスとの間に施された緑が見え、室内は柔らかい自然光で満ち溢れている。また、自動販売機のコーナーは外部から機械自体が見えないよう配置されており、一般的なサービスエリアなどに見受けられる煩雑さがなく、全体が簡潔にまとめられ清潔感がありとても心地良い。
 駐車スペースから道路の進行方向を見ると細長い建物がクランクしており、その先に緑に囲まれた広場とガラススクリーン越しに休憩スペースが見え、期待感を抱かせる。その手前にはこの建物のスケールに程よくあったイベント広場、奥には森のテラスなどが巧みに配置されている。また、この建物は高速道路上にあることで、構造的に高架のエキスパンションジョイントに合ったエキスパンションジョイントを設けることや、建物が高架上にあることから耐風圧強度や耐震強度など様々な制約がある中で計画されているにもかかわらず、それらを感じさせない。設計者の優れたきめ細やかな優れた力量を感じさせる。
 設計者が目指した、利用者が高速道路上にいることを忘れてしまうような軽快で心地よい空間が実現している。
選考委員 東條隆郎