一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2020 奨励賞すばる保育園
AACA賞2020 奨励賞
すばる保育園

作 者:藤村龍至/RFA十林田俊二/CFA

所在地:福岡県小郡市大保960

写真撮影 太田拓実
写真撮影 太田拓実
写真撮影 太田拓実
選評
 福岡市郊外の田んぼの中に建つ平屋の保育園である。クライアントからの要望の一つは、熊本地震のような震災に強く、福岡県周辺に多いPM2.5や黄砂から子供達を守る建物であること。もう一つは、身体の発達に大きく差がある3歳児未満児(0,1,2歳)と3歳以上児(3,4,5歳)の園舎を、大きく2つの部分に分けることであった。
 設計者はこれらの要望を同時に解決するユニークなプランを実現させた。子供たちの安全を守り、かつ子供たちの成長に寄り添い、豊かな自然環境と一体になる園舎を実現させるため、2つの大きなカーブを持った平屋をS字状に結んで配置する計画である。一つは西側の鎮守の森を中心にカーブを描く3歳児未満児(0,1,2歳)用、もう一つは南側の水田を中心にカーブを描く3歳以上児(3,4,5歳)用の平屋である。
 2つの建物のカーブの内側は壁のない開いた空間としつつ、カーブの外側に耐力壁を集約させ、2つのカーブした建物をS字に組み合わせることで構造的バランスを取り、震災にも耐える建物の強さを確保した。又、PM2.5や黄砂などから子供たちを守るため平常時は可能な限り窓を開けないで過ごすことから、窓を開けなくても新鮮な空気を安定した温度で取り入れる地中熱利用換気システム、省エネシステム、エネルギー利用管理システムなどを導入した。
 S字の結節点にエントランス、職員室、応接室、調理室などの本部機能が集められている。エントランスを抜けて、3歳児未満児(0,1,2歳)のエリアを右手に見て直進すると、緩やかにカーブした幅4mの日当たりの良い廊下、音楽演奏や屋内での運動に使う広々としたホールがあり、その先に3歳以上児(3,4,5歳)用のエリアが続く。園児を寝かした後の保育士さんたちの楽しそうに働く姿が印象的だった。
 ホールに柱と梁は一切なく、天井高さ4m、横15mスパンの舞台中央はドーム状に上がっている。舞台に立つと残響が気になるが、音楽会を聞きに来た保護者や演奏者からは音の響が良いと気に入られているそうである。お椀を伏せたようなホールの屋根形状は、どのくらい持ち上げると屋根スラブのひずみを最小に抑えることができるか計算したアルゴリズム・デザインによって、最終形状が決められた。
 敷地の外から保育園を眺めると、盛り上がったホールの屋根と遠くに見える花立山の形が重なって見える。コンピュータープログラムを使って導き出したお椀を伏せた形の屋根と、昔からこの地域の人に親しまれている自然の山・花立山。二つの山が双子のように並んで乳幼児が大好きな「おっぱい」が形づくられた。
選考委員 近田玲子