一般社団法人 日本建築美術工芸協会

一般社団法人 日本建築美術工芸協会

sitemap
AACA賞
AACA賞2020 美術工芸賞HOTEL STRATA NAHA
AACA賞2020 美術工芸賞
HOTEL STRATA NAHA

作 者:富山晃―(全体統括)
中原典人・湯川ちひろ・友口理央・佐々木絢子・小泉智史・藤田はるひ[UDS]
渡瀬育馬・内海大空 [Dugout]
長堂嘉範・伊波和哉 [デザインスタジオ琉球楽団]

所在地:沖縄県那覇市牧志1-19-8

選評
 沖縄那覇市中心部の再開発に伴い建設されたシティーホテルである。
 設計者は、この地が14~15世紀の琉球王国時代には、アジアから首里城への交流文化の道・長虹堤の要所だったことに着目し、その地層をデザインダイヤグラムに、Ryukyu Nature Modern をデザインコンセプトに掲げ、地質データによる土色を低層から高層部へのデザインの底流に一貫している。
 建築計画では客室タイプにおいても様々な工夫がされて、なかでも2層分の天井高と天井一杯の開口をとおして、ベッドにいながらも沖縄の空を大きく体感できる客室は圧感で、頭上の高さと共に外部への広がりが空間体験に特別な変化を与えてユニーク。また広いバルコニー付き3面開口のある部屋からは市街風景をパノラマ展望できる開放感など特徴的な客室空間が多く設けられている。
 内部仕上げは、全館隅々まで沖縄の自然に誘うように床、壁、家具に自然素材が選択され、職人の手で丁寧に組み込まれていてシンプルだが心地よい。
 美術工芸についても、多彩な沖縄の伝統工芸技術が網羅されて、随所に小気味よく配されて、デザインコンセプトに則り統一感をもたらしている。沖縄クチャ(泥)や赤土などによる左官仕事が、壁面レリーフアートに丁寧に塗り込まれ、琉球ガラス工芸はランプシェードやタンブラーに内装と呼応したオリジナルデザインで、またホテルでは重要な要素であるファブリックには、首里織(首里道頓織 、花倉織)がカラープログラムに則って、クッション・スローに用いられ、薄手の優しい織がテーブルランプの光を穏やかに透過して上品に活かされている。最も特徴的な琉球紅型の伝統技術は、客室やレストラン、ロビーに、新しい歴史的テーマやモチーフ、色合いによる現代の紅型壁画として飾られて新鮮である。琉球伝統技術を受け継ぐ若手作家との熱い会話の積み重ねを通して、沖縄の工芸美術が現代の空間に融和して清々しい雰囲気を提供している。
 琉球石灰岩が多用されたレセプションロビーやカフェから連続して広がる緑豊かな庭園に、屋外プールを挟んで別棟レストランが望め、身の丈ほどの軒の低い赤瓦の沖縄民家のそのたたずまいは趣があり、隣接するこの地独特のお墓を抱く豊穣な森が借景として生かされている。最上階の水盤のある屋上展望テラスは、バーと一体となって市街地風景が一望できる。
 このように、全館を通してあらゆる要素において、豪華さや装飾性とは逆にシンプルであり、内外を連続する開放的で自然素肌感覚が入念に織り込まれて、この地の自然環境と一体化する工夫が凝らされている。海辺のリゾートホテルとは違い那覇市街中心部にありながら、訪れる人々に多様な空間体験を通して沖縄を発信する姿勢を実現し、ホテル運営を設計グループ自身が行うことでシティーリゾートホテルとしてのホスピタリティーが一貫している。
 建築美術工芸の新しい融合の姿を具現した作品としてこの賞に相応しい。
選考委員 藤江和子