一般社団法人 日本建築美術工芸協会

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AACA賞
AACA賞2021 特別賞葉山加地邸
AACA賞2021 特別賞
葉山加地邸

作 者:神谷修平

所在地:神奈川県三浦郡葉山町一色

写真撮影 Takumi Ota
選評
葉山の緑深い住宅地の中でも一段と木々に囲まれた坂道を登ったところに1928年にフランクロイドライトの弟子遠藤新によって設計された別荘建築がある。ライトの強い影響を受けたプレーリースタイルのデザインで重層する屋根と大谷石の柱が強いイメージを形づくっている。
国指定の登録有形文化財に指定され保存されてきたが利用者が少なく老朽化が進行していた。
別荘の所有者が変わって新しい所有者は民泊による一棟貸しホテルに再生し「世界から建築文化を愛する人々呼びたい」という発想で既存のデザインを損なう事なくホテル施設として再生する事を望んだ。再生計画は3つの保存レベルを設定し「歴史を尊重して保存に徹するエリア」「家具照明等を新設して歴史と現代を融合するエリア」「現代的に再生するエリア」に区分して、それぞれのエリア毎にデザイン展開させている。
延床面積364㎡の広大な別荘の為数多くの寝室があり、ホテル仕様にする時に基本的に平面計画は既存のまま利用できる為に大きな変更は必要なかったと思われるが、一部バック関係の諸室を改造して大浴場を新設する等の工夫が見られる。又室内空間であった部分をダイニングから連続するオープンテラスに開放する等ホテルらしい空間創りにも成功している。ライトの有機的建築の理念を継承してデザインの統一を計り細部に至るまで現代性を採用しながらオリジナルのデザインを引き立てる手法に成功している。外観は殆ど本来の姿のままで芝生の庭園から続くサロンスペースが明るい開放的な葉山の環境に溶け込んで居心地良い場所になっている。創造的保存をテーマに携えて保存再生プロジェクトに挑んだ設計者の試みが成功して、新しいホテルとしてよみがえり上質な空間を多くの人々に体験されられる機会を提供できた事は高く評価される。
この建築を蘇らせようと考えたオーナーの姿勢に敬意を払いた。
保存再生プロジェクトの高度な実施例として特別賞に価する。
選考委員 岡本 賢